生活者主権の会生活者通信2006年03月号/11頁

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石油は無尽蔵か

千葉県柏市 峯木 貴

 石油の起源は何でしょうか?

 少々初歩的な質問であるが、ほとんどの人は、「大昔の生物の堆積物が熱で変成してできたものである」と答える
であろう。だから、石油には限りがあり、後43年分しかないとも言われている。
 これならばこの話は何の問題もなく終わることになる。

 しかし、この石油が生物の堆積物であるというのは本当のことであろうか?

 生物起源というのは、「有機成因説」ともいわれ、現在最も有力な仮説といわれているに過ぎない。実はまだ、架
設の段階であり結論が出ていないのである。
 これに対抗する「無機成因説」という仮説がある。簡単にいうと石油はマントルから染み出してくる、というもの
である。つまり、生物起源というのはまったくのうそで、地球に含まれる無尽蔵の炭化水素が石油の起源であるとい
うのだ。また、太陽系の地球以外の衛星にも炭化水素はふんだんにあるそうだ。この説は特に否定されているわけで
はなく、どちらかというと「有機成因説」よりも「無機成因説」の方が説得力があるようである。

 ところで「有機成因説」の根拠となるのは唯一以下のことである。
・石油の成分には生物由来の炭化水素が含まれている
・しばしば、「光学活性」を示し、生物が取り込みやすい回転方向の分子が多く混入している
・生物が取り込みやすい奇数の数を持つ炭素化合物が多い
(以上、ジョージ・メイソン大学 ロバート・アーリック教授、ただし、教授は以下の無機成因説も支持している)

 一方「無機成因説」は数々の証拠がある。以下は、コーネル大学のトマス・ゴールド教授の意見を基に他の出所の
意見を加え列挙したものである。

・一度採掘してしまった石油が、再びほぼ同量まで回復する場合もある
・生物起源であれば、地域により石油の成分は大きく変わるはずであるが、ある一定の成分に落ち着いている
・生物起源では説明できない成分も含まれている
・地殻深部の石油には生物の痕跡がない
・生物が生息していた特定の地層だけでなく、どんな深さにも炭化水素が見られる
・本来生物活動とは関係のない花崗岩の隙間に石油があることもある
・ペルシャ湾の油田分布を見るとプレート境界に沿って線上に配列している(つまり生物の堆積層に沿っていないと
いうことだと思う)
・石油中にはダイヤモンドの微粒子が含まれている(ダイヤモンドは無機物由来である)
他多数である。

 ちなみに、生物由来の炭化水素は、地下で発生した石油は地上に上がる過程で、生物起源のものと接触してしまう
ことが原因で、結局「無機成因説」で説明できてしまう。

 これだけの理由を挙げると、どう考えても「無機成因説」の方が有利であるようだが、現在圧倒的に多くの支持者
を集めているのが「有機成因説」である。なぜ、圧倒的な支持を集めているかは定かでないが、今さら、「無機成因
説」が正しく、あと500年以上は枯渇しないなどとは言えないからではないだろうか。

 そして、「無機成因説」は一部の学者が提唱しているだけで、まともに研究されていないのが現状である。ちなみ
に、環境省では、「無機成因説」を証明するような予算措置はされていない。

 「有機成因説」、「無機成因説」の二つの説はいまだに結論が出ていないのだが、「無機成因説」は学会などでも
まともに取り合ってもらえないようである。

 これはうがった考え方であるが、この説が証明されると、今まで「石油が枯渇する」という理論に基づいて築かれ
た様々なエネルギー施策を根本的に見直す必要が出てくるからであろう。さらに、さまざまな「政治的な問題」が上
がってくるからだと思う。

例えば、
・石油が枯渇しないことにより、現在のエネルギー施策、とりわけ温室効果ガスの排出量が少なく、地球温暖化防止
解決のカギといわれている原子力の存在が危うくなる
・中東の産油国の発言力が強くなることにより、世界的な秩序が変わってしまう
・省エネ技術が凋落する
等々である。

 何やら、石油が無尽蔵であることは、世界の不安定を誘ってしまいそうである。だから、石油の起源を厳密に知る
ことは、人間にとって何の幸せにもつながらないということになるかもしれない。たとえ「無機成因説」が正しくて
も、科学的に研究することは今後もないだろう。

 地球温暖化の原因は化石燃料の多量使用であるといわれている。中には化石燃料の多用=地球温暖化と断定してし
まっている学者も多い。しかし石油の起源が「無機成因説」であれば、化石燃料という概念もおかしくなる。今後は
化石燃料を天然資源といいなおし、さらに地球温暖化の原因から問題点までを根本的に見直す必要がある。

生活者主権の会生活者通信2006年03月号/11頁