生活者主権の会生活者通信2004年12月号/06頁..........作成:2004年11月28日/杉原健児

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<新ライフスタイル特集>
変えよう!容器包装リサイクル法

東京都渋谷区 深津輝雄(fwkg7398@mb.infoweb.ne.jp)

 私たちの取り組んでいるごみ問題は、まさにライ
フスタイルの変化そのものなのです。      
 年配の方はちょっと前を思い出してください。豆
腐は弁当箱を持参し、牛乳、ビールはびんで売られ、
中身がなくなるとそのまま容器を返していました。
着るものも、色々と着回して最後は雑巾になりまし
た。その当時はあまりごみは出ませんでした。とこ
ろが今はどうでしょう。私たちが毎日の生活で、ス
ーパーに行って買ってくるものは、ほとんどパック
に包まれていて、レジ袋も貰えるので手ぶらで行っ
ても買い物が出来る大変便利な世の中になったので
すが、使用したあとにペットボトルや発泡スチロー
ルのトレイなどの"容器包装ごみ"は、残りました。
私たちの家庭から出されるごみ(一般廃棄物という)
のうち容器包装ごみが容積基準で全体の60%も占め
ていて生ごみと合わせて東西両横綱になっています。

【容器包装リサイクル法の出来た背景】 
 1980〜90年代は、ごみが物凄く増えた時期で、何
とかごみを減らさないことには、"夢の島"がなくな
ってしまう危機感がありました。この頃、自治体に
よるびん・缶・古紙の資源回収がはじまったのです。
1990年前半には高度成長も終わり、それまでは有償
で回っていたこれらの資源が、金を付けなければ回
らない、いわゆる"逆有償"の時代になりました。そ
のような時代的背景の下に、1995年に容器包装リサ
イクル法(以下容リ法)は制定され、97年4月より 
施行されました。               

【容器包装リサイクル法の改正への動き】
施行10年後の平成7年に見直しをすることになって 
おり、そのための検討会がこれからはじまります。
 「容器包装リサイクル法の改正を求める全国ネッ
トワーク」では、署名運動を開始し、94万通を超え
る国会請願をしましたが、採択されませんでした。
その請願の趣旨は、拡大生産者責任(EPRともい
う)を基本に据えること。もう一つは、レデュース、
リユース、リサイクルの3Rの優先順位を明記し、
それを推進するための経済手法や規制を盛り込むこ
とでした。                  
 この機会を捉え、とことん討論会では、国・地方
自治体・業界・学識者・市民の夫々を代表する方々
に出席して頂き、4時間余りパネルディスカッショ
ンをしました。代表とはいうものの、出席された方
々の個人的な見解もまじえて自由に討論するもので、
その中で、少しでも共通認識を増やして行きたいと
いうのが目的でした。生活者主権の会からは、小俣
会長をはじめ多くの方々に参加頂き、誠にありがと
うございました。               

【夫々の立場から見た容器包装リサイクル法】
市民、自治体は、拡大生産者責任(EPR)の理念
を改正容リ法の基本に据えることを主張しました。
学識者からは、「EPRのシステムは、より回収し
やすい商品に設計変更する動機付けになる」という
説明がありました。事業者は、生産者に負担を押し
付けることに反対し、市民は分別、自治体は収集・
運搬、事業者は再商品化などと、夫々が役割分担す
ることが大切であると主張をしました。     
 国からは、「後退してきたリターナブル容器を復
活させるのは、世の中の流れに対抗することになる
ので、決壊寸前の堤防を支えるような難しい課題で
す。それより問題なのは、自治体の回収コストで、
これをもっと合理化出来ないと単に、費用負担の移
動を論議するだけでは、社会的な総費用を効率化す
ることに繋がらない」と主張しました。     
 市民からは、「廃棄物会計の手法により計算する
と、負担の割合は自治体負担が7割、事業者負担が
3割。翌年の調査では自治体負担が 7.5割、事業者
負担が 2.5割。リサイクル事業が進んだ結果、自治
体の負担は増加しました。自治体が、熱心にやれば
やる程「リサイクル貧乏」になりました。一方事業
者には、負担が軽すぎ、回収の設計の変更などの動
機付けになっていません」           

【回収コストの高さとバラツキ】
 国は、自治体の効率の悪さが回収費用の増大につ
ながっていると主張しました。「全部民間に任せ、
最も効率の良いシステムを導入する方がこの課題へ
の解答ではないでしょうか。環境省で市町村のコス
ト分析をしているがなかなか難しい作業です」  
 自治体から「確かに、自治体の費用は、民間と比
べて甘いということは認めます。個別のコスト計算
は難しい。標準化が必要です。リサイクルは、製品
の原料に戻す訳ですから、精度を維持するための操
作には、それ相当の費用がかかります」みずから、
自治体のコスト意識が希薄なことは認めるが、それ
にしても財政負担が膨大なのです」       
 事業者に回収費の負担を移すに当たり標準化され
た回収費を算出する事が急務です。回収コストが高
いことも指摘されました。今後の課題として共通認
識されました。                

【次は、リターナブル容器の話】
 事業者から、ビールの事例について「1970年度は
100%近くがリターナブル容器(びん)でしたが、 
毎年、前年比1割減で推移して2003年は、2割を切
るところまで下がりました。その原因は、びんから
缶へのシフトしたこと、もう一つの原因は、ひとこ
とでいえば、ライフスタイルの変化だそうです。こ
れが、今まで、10年間も継続的に、色々と手を変え、
リターナブルのキャンペーン運動をやってきた結果
なのです。リターナブルで頑張れる所には努力する
が、そうでない所にも消費者ニーズがあることも是
非認識して頂きたいとのことです。       
 国もリターナブル容器が減少したのは、長い時間
をかけてこのように変化してきたのであってこの大
きな社会の流れに対抗する試みは難しいのでは…と
消極的です。                 
 学識者から、「二酸化炭素排出量などLCA上リ
ターナブル容器が20回転できれば最も優れていると
分かっているので行政的にも20回の回収を保障する
制度が必要です。デポジットもその一つの解決策で
はないでしょうか。そういう容器を選択するような
経済誘導が必要です。諸外国でも、デポジットをか
けているところは、80〜90%位は戻ってきています」

【夫々の立場から、容リ法をどう変えるか】
◆市民の立場             
 製造現場の変革を促進するため、事業者負担のE
PRの考えをきちんと織り込むことです。リデュー
ス、リユース、リサイクルの優先順位の明記し、そ
れを保障する動機付けが必要です。達成時期、数値
目標を明確にすることです。          
◆事業者の立場            
 EPRにより価格に内部化しても、販売価格にバ
ラツキがあり、消費者に購入行動の決定につながる
信号になり得ないのです。 全国の自治体の中で、
採算性を持って行われる仕組みにするのは、もっと
広域処理で効率化を図る必要があります。    
◆自治体の立場            
 EPRの機能が徹底されるような仕組みにします。
財政負担は非常に大きいので、積極的に取り組むイ
ンセンティブは全くありません。「家電リサイクル
法」とは違い限りなくごみに近い状態のものを対象
に、自治体が住民の信頼も得て、ごみ処理の枠組み
を利用してリサイクルする仕組みを作ったのです。
これからは、事業者責任で回収・再商品化を図り、
リサイクルに関しては、自治体は補完的な役割にな
ります。                   
◆国の立場              
 問題は社会的総コストを如何に下げて効率化を図
ることに尽きます。それは民間がやることです。さ
もないと全体のコストは変わらずに負担が移るだけ
のことです。デポジットをやるには、社会的総コス
トがかかります。リターナブルも地域で回収する動
きがあれば、そういうローカルな動きを促進します。
そういう政策が現実的だと思います。EPRといっ
ても、これが正解という絶対的なものがあるのでは
なく、自治体、産業界、政府と色々なやり取りの中
でそういう風に決まったようで解は一つではないの
ではないでしょうか。             
◆学識者の立場            
 拡大生産者責任は、「分別収集の効率を損なわな
い範囲に限定します。掛かった分すべてをつけにま
わすのではなく、あらかじめこの容器を処理するに
は、この位は掛かるであろうと想定した金額だけを
請求すること」になります。デポジットは処理経費
の 1.5倍かかり、若干費用が高くなるのも事実です。
反対意見の一番大きな理由だと思いますが、それを
社会が許容するかどうかの判断になります。欧州、
米国でも、デポジット制度が導入され、かなり高い
返却率が示されています。日本でも検討しても良い
のではないでしょうか。            
                       
 ライフスタイルの変化という特集でしたが、うま
くその中に入り込めたでしょうか。今の容リ法では、
ごみは減りません。逆に使い捨てのペットボトルを
氾濫させ、リターナブル容器を消滅に追い込んでし
まいました。事業者の負担が軽いのです。きちんと
EPRを明記する必要があります。税金で処理する
ことが、問題を見え難くしています。4人家族で年
間8万円もごみ処理経費に使われています。   
 また、世田谷の清掃工場の立替工事費は 166億円
で、ガス化溶融炉の建設がなされています。これも、
23区皆さんには人数割の負担になります。全国的に
ごみ量より焼却炉の処理能力が過剰になっており、
それでも焼却炉を建て続ける行政の矛盾が指摘され
ています。もう一度ライフスタイルの変換が必要で
はないでしょうか。              

生活者主権の会生活者通信2004年12月号/06頁