生活者主権の会生活者通信2004年11月号/11頁..........作成:2004年11月07日/杉原健児

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第11回全国市民オンブズマン函館大会に出席して
(不正追求の手立て)

神奈川県麻生区 江口武正 (t_eguchi@jb3.so-net.ne.jp)

 8月28日、29日に函館で開催された第11回
全国市民オンブズマン函館大会に出席してきたので
印象に残った項目をお知らせしたい。      
 最も注目を集めたのは、警察による裏金作りを糾
す関係者による報告であった。         
 大会では関係者による「警察問題パネルディスカ
ッション」があり、道警裏金問題を直接指摘した面
々が続々と登場し、道警が組織的に裏金を作る実態
を事細かに暴露した。そのパネリストは評論家の大
谷昭宏氏の他、勇気ある発言をした原田宏二元道警
釧路方面本部長、斎藤邦雄元弟子屈署次長、佐藤一
北海道新聞道警裏金取材班記者、地元弁護士の市川
守弘氏である。東京から積極的に支援した清水勉弁
護士が司会をおこない、素晴らしいディスカッショ
ンが展開された。               
 原田氏の元部下でもあった稲葉氏が、銃器捜査部
門で成績を上げるために自腹を切って努力したにか
かわらず、その努力が常識を超えたものまでエスカ
レートしてしまい、逆に稲葉氏が逮捕される「稲葉
事件」があったが、原田氏が稲葉氏を弁護できなか
ったという自責の念が、今回、原田氏が証言するに
至った原因だとの生々しい話があった。現場が使用
すべき捜査費が裏金に回り、本来の用途に使われな
い事が「稲葉事件」の主因だと主張し、原田氏を弁
護することが出来なかった自分の弱さをこの際、晴
らしたいという原田氏の男気である。また、斎藤氏
は先輩の原田氏だけを晒し者に出来ないと、原田氏
に内緒で証言をしたといった胸を打つ話が展開され
た。                     
 さらに北海道新聞が道警の嫌がらせに負けずに、
地道に報道した事が特筆される、同新聞のHPを見る
と「道警裏金疑惑」の項目があり、その地道な報道
を追うことが出来るが賞賛すべき内容である。(こ
の件で今年の日本新聞協会賞を受賞している)マス
コミ報道を受け、内部告発者を守り、監査請求、住
民訴訟と問題を掘り下げたのが、札幌市民オンブズ
マンを始めとする弁護士・オンブヅマン集団でその
中心が市川守弘弁護士である。         
 どの官庁もしたたかであるが、警察という組織は
その最たるもので、簡単にはその不正を暴くことは
難しい組織であるが、今回見事にその壁を打ち破っ
たのは、                   
 1)マスコミの勇気ある報道・継続した追及  
 2)勇気ある内部告発者の出現        
 3)全国的な組織を有するオンブズマンの司法制
   度も活用した追及            
が揃ったことだと確信する。不正・不法を暴く際の
定石を見る思いをした、他の不正・不法を粉砕する
にも応用できる大切な点だと考える。      
 28日のオンブズマン大会でもその前日までに、
市川弁護士に対し道警担当の弁護士から市川弁護士
の発言が「弁護士として品位を欠く」という理由に
もならない理由で弁護士懲戒請求が札幌弁護士会に
出されたという嫌がらせの事実が報告されていた。
そんな悪あがきをする道警の態度を見ると、組織ぐ
るみの裏金作りを道警が認めるのはまだまだ先かと
考えていた。                 
 ところが、大会終了後2週間も経たない9月13
日の北海道議会総務委員会において北海道警察本部
は「1998年〜2000年の間、道警全体で約14億円を
裏金にしていたことを認め、芦刈本部長が謝罪した。
 道警は約7.3億円については使途に問題がなく、
残額に利子を加算した約8.5億円を返還すること
を表明した。都道府県で組織ぐるみの裏金作りを認
めたのは今回の道警が始めてであり、本部長謝罪は
画期的である。道警は2003年11月に旭川中央署で
の疑惑を北海道新聞より追求された以降一貫して、
「不正なし」と強弁していた。         
 今年に入り原田元釧路方面本部長、斎藤元弟子屈
署次長が実名で証言を行い、その後の特別調査等を
経過し、機が熟していたこの時期のオンブズマン大
会であり、520名の出席者、及び11回大会で最
も多いマスコミ関係者の前で赤裸々に事実を暴露さ
れ、ついに止めを刺され、道警も観念して組織での
裏金を認めざるを得なくなったのであろう。   
 久しぶりの市民側の大勝利である、この話を聞く
だけでも函館に「はせ参じた」意味があった。  
 その他にも、「公共事業分科会」「談合・入札制
度改革分科会」での税金無駄遣いの追求、「包括外
部監査評価班」作成の「通信簿」等の非常に興味深
い多くの報告があった事を報告しておきます。  
 「生活者主権の会」の皆様も、「オンブズマン活
動」にさらなるご関心を持っていただきたく投稿い
たしました。                 

生活者主権の会生活者通信2004年11月号/11頁