生活者主権の会生活者通信2004年06月号/05頁..........作成:2004年05月30日/杉原健児

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公的年金制度の一元化に想う

文京区 松井孝司

 公的年金制度の一元化を自公民3党が合意して国
会で検討するという。民主党は与党に大切な政策を
取られてしまったとする説もあるが、国会はもっと
早く制度改革に取り組むべきであった。過去債務が
480兆円にもなる公的年金制度は実質崩壊してい
ると見るべきだろう。
 年金制度の一元化は制度改革の入り口に過ぎない。
議員年金、共済年金、厚生年金、国民年金の年金制
度間に存在する不公平だけではなく、世代間不公平
の是正のためにも必要であり、一元化は社会正義の
実現のために必要な措置なのだ。自営業者の所得捕
捉が難しいから制度改革を先送りするなどという主
張は本末転倒であり、正しく所得を捕捉しない税制
こそ大問題だ。
 公的年金制度の一元化だけではなく、税制の不公
平、不合理是正のために、税制の一元化も併せて検
討すべきだろう。
 国民負担という観点からは、年金負担も税金納付
も変わりはない。同じ一つの財布から、出てゆくお
金である。世代間不公平を解消し、国民の「権利」
と「義務」を一体化してこそ一元化の意味がある。
 「権利」と「義務」の保有者は同一人であるべき
で、憲法に定める通り納税義務を有するのは主権者
である国民である。参政権の無い法人、企業に課税
することは間違っており、法人への課税は、法人が
個人に代わって納税していると考えるべきである。
法人、企業が厚生年金の半額を負担するも同じ理屈
だ。
 年金も税金も、解散または海外へ脱出できる法人、
企業が担っている現行の制度こそが問題である。
 年金給付を維持し、政府の巨額債務を解消するた
めに、法人、企業の負担が激増したら、優良企業の
海外への脱出を促進することになるだろう。年金給
付を維持し、日本経済を健全化するために個人所得
の捕捉に努め、法人に対する課税は軽減または撤廃
すべきだ。
 米国では、大企業は「二重課税」されているが、
小規模企業には株主個人の所得として課税するパス
・スルー性が与えられている。州法に定めるGPS(Ge
neral Partnership)、LPS(Limited Partnership)、
LLC(Limited Liability Company)など、いずれも事
業組織に対する課税はパス・スルー方式を採用し、
個人の脱税は許さない仕組みになっている。米国籍
を持つ個人は米国を脱出しても、死なないかぎり、
税金が追いかけてくるのだ。
 「法人成り」という言葉に見られるように、日本
の中小個人企業の法人化は個人への課税を節減する
手段として使われているが、個人課税を徹底すれば、
法人税を撤廃しても実害は少なく、むしろ税制が簡
素化、合理化されるだろう。

アメリカの「ゆとり教育」が始まった

千葉県柏市 峯木 貴(mineki@taurus.bekkoame.ne.jp)

 'No Child Left Behind' (一人の落ちこぼれも 
出してはいけない。)              
 アメリカでは、ブッシュ大統領の命令で教育改革
が始まっているようである。          
 アメリカの教科書は、小学校のものでさえ非常に
分厚く、とても読みきれるものではないそうである。
それは、いろいろな人種、宗教等に配慮してあるた
め、一つの記述をするのにも、かなりくどくどと書
かなければならないためである。下手なことを書い
たり、説明不足だったりすると裁判沙汰になってし
まうからであろう。そんな分厚い教科書に全ての生
徒がついていけるわけはなく、これがアメリカの教
育の大きな問題となっている。         
 そこで他の国の教科書を物色しているのだが、一
番気に入られたのがなんと日本の教科書。それもゆ
とり教育用に極めて簡略されたものである。   
 「この教科書は非常に薄く、それも観点をしっか
り抑えてある。注目すべきである。」      
 アメリカの教育者は絶賛している。      
 日本のゆとり教育はたったの2年でお払い箱にな
ってしまったのに、アメリカではそれをお手本にし
たいと考えているのだ。ちょっと奇妙な感じがする
が、隣の芝がきれいに見えたのだろうか。    
 日本のゆとり教育は私の子供に対しても悪影響を
与えてしまった。それは、私の子が小学校5年に進 
級したとき、子供が算数の教科書を見て嘆いていた
のだが、                   
 「この教科書は去年やったものだよ。なんでまた
今年も同じことをやらなければならないの?」と。
 私はその教科書を見てびっくりしてしまった。な
んと去年の4年生の教科書と同じ内容のまま、表紙
は5年生となっていたのである。これは印刷ミスで 
はない。ゆとり教育のため、いままで4年生でやっ
ていたことが全て5年生に移行したのだ。つまり私
の子供は一年間まったく同じ授業を受けざるを得な
かったのだ。こんな詳細な事情は一般には知られて
いない。ましてやアメリカの教育者はまったく知る
由もないだろう。               
 しかし、日本でお払い箱になった「ゆとり教育」
がアメリカで成功したら、日本の文部科学省、教育
者や学識経験者はどのような言い訳をするのであろ
うか。ゆとり教育が復活するのか?       

生活者主権の会生活者通信2004年06月号/05頁