生活者主権の会生活者通信2004年04月号/03頁..........作成:2004年04月28日/杉原健児

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洗脳しているの?

千葉県柏市 峯木 貴(mineki@taurus.bekkoame.ne.jp)

 「お父さんは、僕のことを洗脳しているの?」 
なんて一著前のことを言うから、日頃考えているこ
とを中学生の子供でも分かりやすいように説明した。
 「この世の中に国があって、法律があって、軍隊
があって、警察があるのはなぜだ?こんなものなけ
れば人間は自由に生きられるはずだけど。」   
 この問いに、                
 「反対に自由になれないから。」       
と、解ったような、解らないような返事が返った。
 以下は、私の説明である。          
 もう数百年も前にアナーキズムといって政府は一
切いらないという思想があった。しかし、このよう
な「自由になりたい」という考えはいつの時代にも
ある。このような無政府状態で、もし誰かが強盗を
して数百万円を手にしたらどうなるか?悪いことと
は知りながら、その報酬を皆うらやましがるだろう。
悪いことをしても警察がないからつかまらず、やり
得だからである。法律がないから罪にもならないの
だ。                     
 現実の社会はただでさえ厳しい法治国家なのに未
だに殺人や強盗はなくならない。これがまったく自
由な無政府国家であれば、殺人や強盗がなくなり幸
せな社会になれるはずがない。こんな世界では人々
は自由ではあるが、常に怯えていなければならない。
強くてお金があるものは施設警察を作るだろう。場
合によっては海賊や山賊を雇って略奪をするかもし
れない。罪にはならないのである。そして弱い人間
は常に略奪の対象となる。           
 こんなアナーキーな時代もかつてあった。政府と
いうものが存在する以前の原始社会である。そこで
は強い人間が全てを支配していた。弱い人間は搾取
されるだけだ。そのような時代は長い年月を経て、
やっと国家が出来上がり、法律、警察、軍隊が出来
上がって治安が回復した。しかし、どんな時代でも
「(極端な)自由」が欲しい、という人間はいるもの
である。その最たるものはテロリストである。彼ら
にとって国は邪魔な存在であり、また法律もそうで
ある。常に警察と敵対している。        
 ここまで話すと少しは納得したようだが、最後に
もっと重要なことを話さなければならなかった。も
し、友達同士が集まり、そこに教師や親という大人
が入らなかったらどうなるか。彼らはその中で一番
強いものに引っ張られ結局は「自由」を選ぶだろう。
その自由とは国や法律からの自由であり、誰にも干
渉されない自由である。法律や警察は彼らにとって
も非常にわずらわしいものなのである。しかし今説
明したように、その「自由」と引き換えに弱肉強食
の世界になっていく。弱いものは常に強いものの犠
牲になる、と教えてくれる人がいないからである。
このような特殊な集まりはエスカレートすると、強
者は弱者に対して命令するようになる。略奪するよ
うに、と。これはまさにテロリストである。   
 教師や親、また、国はこのような極めて「自由」
な世界を避けるために、人々を洗脳しなければなら
ない。それは一般的には「教育」という。もし、洗
脳する人がいなければ時代は逆戻りしてしまうのだ。
また、洗脳する人がいなくて極めて自由な世界は、
「狼に育てられた少女」と同じように本能で生きる
しかない。                  
 ここまで言うとやっと分かったようだ。    
 「つまり、普通にしろ、ということを言いたいの
?」と。「その通り。」            

生活者主権の会生活者通信2004年04月号/03頁