生活者主権の会生活者通信2004年03月号/04頁..........作成:2004年03月14日/杉原健児

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自衛隊は撤退せよ・日米関係を問い直せ

八王子市 片岡 将

まさに不正義の戦争              
 「大量破壊兵器の武装解除」を振りかざして始ま
ったイラク戦争は、ブッシュ政権の前財務長官や調
査団長のCIA特別顧問の証言から見ても、要する
に当初から「フセインさえやっつければ」というこ
とで遂行されたものであり、大量破壊兵器の未発見
は米国の「不正義」の何よりの証明である。米英と
もに公的な調査機関を設置するという有様である。
小泉首相もまた開戦当時「大量破壊兵器を廃棄させ
る」ために、米国を支持することを国民に訴えた。
彼自身、この責任はどうやって取るつもりなのか。
対米支援を「国際協力」にすり替え、笑止千万にも
憲法前文の一部まで利用したうえ、米国の意に沿い
自衛隊を差し出すことについて「国民精神が試され
ている」などというふざけたセリフを平然と言って
のけた。こんな首相を持っている国民こそ実に不幸
なことである。                
 近頃、「日米同盟」を強調するため、明治35年
に締結された日英同盟を引き合いに出す論者もいる
が、この同盟はアジアに多くの植民地を持った英国
との必然的な摩擦によって(独立運動などを含め、
残念ながら日本はそれに正しく対処できなかったと
はいえ)、やがて解消される運命にあったもので、
激烈な帝国主義時代のこの同盟を例に、日本はやは
りアングロサクソンと提携していれば安全なのだ、
だから今は米国なのだという説を唱える向きさえあ
るのは奇怪至極なことである。         

国連を妨害しているものは誰か         
 米国の国連無視の事例は過去にも数多くあるが、
とくにブッシュ政権になってから米国の世界戦略に
とって国連は「ジャマな存在」と見る傾向が強くな
った。国連は万能ではないし改革も必要だが、多額
の分担金を滞納していながら横ヤリを入れ、イラク
問題でも国連が明確な方針を出すのを妨害してきた。
米国内には国連脱退さえ主張する勢力がある。  
 パレスチナ問題でもイスラエルへの一方的な肩入
れの是正は、選挙に対するユダヤ系の影響力が強い
現状では相当困難なものがあるだろう。     

不健全な日米関係               
 真の友人同士なら、お互い相手の誤りをはっきり
と指摘し是正を求めることもあって然るべきだろう。
ところが,従来、日本政府は米国が民主党政権であ
ろうと共和党であろうと、はたまた好戦主義者のネ
オコンの力が強い今の政権であろうと、その都度、
見境もなく無条件に迎合していくという不健全な関
係を続けてきた。               
 どうやら、マスコミや国民の中にもこの国がすっ
かり米国に平定され、従属国になり果てているので
はないかということに、少しの疑念も抱かない者た
ちがいる。                  
 イラク派遣に始まった自衛隊の「海外派兵」は、
米軍の世界戦略に組み込まれる形で、米軍の行動に
よっては恒常化していく危険がある。まさに将棋の
「駒」の危うさである。            
 ところでこのたびは、与党内にも異を唱える人た
ちがいた。加藤紘一、古賀誠、亀井静香の各氏や箕
輪元郵政相(防衛政務次官)、防衛官僚だった新潟
県の加茂市の市長などだ。私はこれらの人たちと意
見がすべて一致するわけでもないし、この人たちも
それぞれの立場や考え方は違うのだろうが、とにか
くその勇気は讃えたいと思う。         

アジアでも孤立化する日本           
 最近の自由貿易協定(FTA)創設問題でも米国
の意向ばかりを気にするあまり、中国やインドに遅
れをとり、少なからぬ失望感をアジア諸国に与えて
しまった。自分の頭で世界を考えることをせず、米
国というフィルターを通してしか物事を見ていない
ということが常態化しているのである。日本外務省
は外国人記者からも「アメリカ国務省東京出張所」
と揶揄されているというからなんとも情けない限り
で、天木前レバノン大使の「爪の垢」でも、少しは
煎じて飲んだらどうかと言いたいものである。  

外国軍隊の基地は不要、自主防衛の努力を    
 占領時代ならいざしらず、戦後60年も経つとい
うのに、いまだわが国の主権が及ばない多くの米軍
基地がある。私はかつて米軍基地に勤務する日本人
労働者の離職対策の委員を務めたことがあって、横
田、横須賀はもちろん三沢、岩国そして沖縄の基地
を視察したことがある。いずれも巨大な基地だ。変
わったことといえば基地の入り口に新安保条約(現
条約)以降、日の丸の旗も掲げられるようになった
ことくらいである。軍事施設はもちろん、広大でな
んとも優雅な住環境施設が印象的だった。かくも長
期にわたって外国軍隊の基地が存在することは、わ
が国の伝統にそぐわないと思う。沖縄を含め、米軍
の常駐基地は撤去すべきである。        
 わが国の領土・領海・領空の侵犯に断固として対
処する自主防衛への努力が必要だ。自主防衛はいわ
ゆる単純化された「単独防衛」を意味するものでは
ない。「依存しない」ことなのである。他国との関
係を自己の判断と責任において対等に構築すること
であり、その結果、軍事的に協力できる友好国を選
択することもあり得るだろう。仮に侵略に対してわ
が国の力がどうしても及ばない場合は、選択した友
好国軍隊の一時あるいは暫時駐留も考えられないこ
とではない。逆に日本が助けに行くことも皆無とは
言えない。                  
 真の「自主防衛」があってこそ、真の「集団的自
衛」があるのであって、今のような日米安保の枠内
での「集団的自衛」とは峻別されなければならない。

自主防衛のコストは覚悟せよ          
 自主防衛についてはコスト高が指摘されている。
それも考えられるであろう。しかし、仄聞するとこ
ろによれば日本の地理的条件と日本人に合った精強
な兵器体系を整備しても、現安保体制下よりもかえ
って安上がりだと指摘する軍事専門家もいるという。
徹底的に検討すべき問題である。当面、精強な通常
兵器のみで自衛するか、独自に核武装が必要かも十
分議論すべきである。いずれにも対応できるよう研
究すべきである。               
 安保条約に規定されてもいない莫大な「思いやり
予算」を気前よく提供し、高い米国製兵器をせっせ
と買い込み(買わされ)、また、会計検査院に指摘
されたように、米側に代金を支払っておきながら、
全く納品されていないものも相当額あるなどという
屈辱的な血税の無駄使いこそ糾弾されなければなら
ない。自主防衛のための費用に使用したほうがはる
かに国益にかなうものである。         

北朝鮮を口実にするな             
 北朝鮮の脅威があるからイラク問題で米国に協力
すべきだというが、わが国と北朝鮮とのまさに圧倒
的な国力の差(韓国にも絶望的なほど及ばない)、
李朝国家の現代版の如きその専制の内情と目も当て
られぬ経済惨状を考えると、米国の手を借りなくて
も彼らが攻撃してくれば本来なら報復の大打撃を与
える力を、わが国は持っている筈なのである。自ら
の力を信じようともせず、また努力もしないで浮き
足立ち、ただ米国にすがるという姿勢こそ国民自体
も根本的に考え直さなければならないことである。

米国よ、世界のために考え直せ         
 米国よ、よく考えてほしい。唯一の豊かな超大国
を自認しながら国内の貧富の差・階層分化はますま
す拡大し、もはや安定した社会を持ち得なくなって
いるのではないのか。明らかに戦争中毒・兵器中毒
に陥り、果てしなき軍拡と、ドルの垂れ流しという
無責任な政策が世界経済に大打撃を与える懸念も指
摘されているのだ。世界に君臨しているつもりでも、
膨大な貿易赤字で立証されるように供給を外部世界
に依存する大消費帝国になっており、ドルの弱体化
は進行して、次第に衰退への道を歩み出しているの
ではないのか。                
 ところが、愚かな日本政府は抜本的構造改革を怠
ったまま「円高防止」を声高に叫び、自国の「円」
をおとしめ、財政赤字垂れ流しのドルの通貨価値を
懸命に守るという「反国民的」な通貨政策を行なっ
ている。まことに許し難い所業といわなければなら
ない。                    

日米安保条約から友好条約へ          
 しかし、歴史は短いが米国が良き伝統を持った有
力な国であることは言を俟たない。太平洋を挟んで
真に平和と友好・平等互恵の関係を築くために、今
の安保条約ではなく、「日米友好条約」を新たに締
結することを主張する。日米両国民は学術・文化交
流なども含めて本当に深く理解し合えているのだろ
うか。軍事的繋がりだけが突出しているのではない
のか。本当の友人になっているのか、よく考え直し
て見るべきだと思う。             
 と同時にアジアやヨーロッパとの太い繋がりも構
築しなければならない。領土問題や大陸棚・海洋資
源問題では断固として主張を明確にしたうえ、中国
・ロシアとも同様である。           

「無条件親米保守」「従米保守」との闘い    
 9条を素直に読めば、自衛隊の存在そのものが憲
法違反であることは明らかだ。解釈改憲の積み重ね
は法に対する不信を招いており、日本の本心がわか
らず、逆に周辺諸国の疑心を高めることになる。自
主防衛が憲法改正(新国軍の文民統制と国会の監督
を明確に)を伴うのは当たり前のことだ。時代の推
移により現憲法にはそのほかに見直すべき点もある。
現憲法「固守」派は世論の中でも次第に淘汰されつ
つあるのではないか。             
 ただ、警戒すべきは国家権力を壟断し、わが世の
春を謳歌しているいわゆる「無条件親米保守」「従
米保守」勢力が憲法改正の主導権を握ろうとしてい
ることである。これは阻止しなければならない。現
在でも、この国の最高法規は憲法ではなく日米安保
条約・体制だというのが実態であるのに、これらの
勢力に改憲を委ねれば完璧に米国の奴隷国家に成り
果ててしまうだろう。戦後の一つの特徴として、愛
国心や民族教育の必要性をことさら強調する保守派
の中に、根深く抜き難いような「無条件親米保守」
「従米保守」勢力が大きく存在しており、「日本に
自由と民主主義を教えた」と喧伝する米国は自らの
都合でこれらを陰に陽に支援してきた。CIAの自
民党への資金提供疑惑などはその好例であろう。 
 この国の進歩と発展のために「無条件親米保守」
「従米保守」克服の闘いが今後予想されるだろう。
米国が変わらない限りあの国への幻想は捨てるべき
である。「かさぶた」をとっていくような闘いの中
からやがて新しい政治勢力や、新しい政党も誕生し
て来るだろう。                

そして最後に・・・自衛隊は撤退せよ      
 真のイラク復興のためには、一刻も早く占領軍政
をやめるべきであるのに、逆に占領軍政に協力する
ために自衛隊が出て行くというのは全く道理に反す
る。米兵の死者も戦争中よりも増え続けているでは
ないか。米軍の士気の維持さえ問題視されている。
イラク人に主権を委譲し、その後世界の諸国と共に
企業も民間人も力を合わせ支援すべきである。  
 対イラク政策を担当する日本政府高官が「自衛隊
は南部の一部の復興にかかわるだけで、イラク全体
としては大したことはない」と言っているという 
(毎日新聞2月3日付け・記者の目)。繰り返すが、
自衛隊は米国に追従する象徴的メッセージとして差
し出されたのである。かえってイラク社会に無用の
混乱を招きかねない。敢然と撤退すべきである。 

生活者主権の会生活者通信2004年03月号/04頁