生活者主権の会生活者通信2002年06月号/14頁..........作成:2002年05月22日/杉原健児

全面拡大表示

「ゆとり」という教育問題について

杉並区 白川惠一

〜6月1日(土)17:00より「一日の会」で講演があります(本号16頁参照)〜

  先日、親戚の法事があり、たまたま「ゆとり教育」
が話題になりました。言葉は結構だが、週五日制、
円周率「3」で教えて良いのか、単なる甘やかしで
はないか、繰り返し訓練するのが、基礎教育の根幹
で、訓練されて育った我々が戦い抜き、且つ戦後の
復興をやり通した。私立では五日制を採用しないと
ころもあるようだ。アジア各国から日本に家族を連
れてきて、子供を日本の学校に入れているビジネス
マン達の間では、日本の基礎教育では将来役立たず
の人間になる、自国の学校に入れるため子供を帰国
させることが起こっている・・。などが話題になり
ました。                                      
  銀行預金のペイオフ、食料の問題、医療の問題と
同じく、教育も自己責任の時代になったことは間違
いありません。自由にのびのびということは、わが
まま、気ままも入って来ます。人前でイチャツク男
女、高校の制服着たのもいます。文部省も先生達も
そういうことは教えていないと言うでしょうが現実
の若者の公徳心、倫理観が素晴らしいとはおくびに
も言えないでしょう。まして戦前の若者の道徳心と
は較べものになりません。教育勅語は戦前のものと
言って否定するのは簡単です。教育基本法があると
も言うでしょう。しかし教育勅語を徹底して覚え込
ませたほどの努力は皆無です。どんな法律や倫理、
果ては校則に至るまでまで結局の所、子供を育てる
機関に携わる人間の問題なのです。              
  一方、子供達が学校生活に於て、陰湿ないじめな
ど、異常な緊張状態に置かれているのも事実です。
登校拒否、引きこもり問題に長年かかわってきてい
るのでその面から注意を喚起して頂きたいことがあ
ります。指導要領は3・4年毎に改定されているよ
うですが、この問題は未だ解決されていません。当
初はまだ不登校という言葉はなく、使われていませ
んでした。ところが登校拒否という言葉は子供の人
権を無視している、行きたがっているのだから拒否
ではない、とマスコミなどで騒がれたことがありま
す。それなら不登校という言葉を使えば改善される
のかというと問題解決は全然ならず、単なる批判で
事足れりという風潮になっています。日本人はこの
様な言葉に弱く、そのため問題点を把握し、解決へ
の前進をしない癖があるようです。              
  人間は異常緊張が連続すると、ちょっとの刺激に
も耐えられない状態になり、現実と認識の間に距離
を置こうとする防御機能が働いてしまいます。丁度
膨らんだ風船がちょっとつついただけで割れてしま
うようなもの、波間に揺れる舟も復原力のある間は
立ち直れるが、水を被り沈没するとそのサルベージ、
修復のためのエネルギーは膨大なものとなります。
本人のみならず、家族の消耗は傍目では創造のつか
ない程の負担を強いられます。そうならないために、
更には有為の人間とするためにも、是非とも子育て
について、大人はしっかり親としての修行をする必
要があります。(例え自分の子供を持たなくても)
  大事なことは「訓練や鍛練による疲労」と「精神
緊張の異常」との違いをハッキリと知って頂きたい
のです。そこをはっきりするため一つの提言をして
皆様のご意見を伺いたいと思います。            
  運動会での「かけっこ」で一等、二等とかを決め
ない、或いはゴールでは一緒に入るという話を聞い
たことがあります。不平等だからとか、弱いものが
可愛そうとか言うのでしょうか。ところが学業の成
績評価は偏差値、五段階評価です。クラス全体がど
んなに成績が良くても、誰かには「1」を付けなけ
ればなりません。その逆のクラス全体の出来が悪く
ても誰かには「5」を付けます。となれば、文句を
言われない奴(親)に「1」を付けたくもなります。
目に見えない競争が発生します。受験のための内申
点を上げる努力が必要になります。現に偏差値評価
を止めにした学校もあるようです。学習目標達成者
には「5」を与えてます。五段評価を止めることを
提言したいと思います。                        
  戦前・戦中の学校は厳しかったが、楽しいものだ
ったというのが年配の先輩がたの思い出の中にある
と思います。先生がたも親達も、子供の持つ心の痛
み、苦しみを良く理解してくれていたと思います。
だから勉強が出来なくても、宿題をしないで叱られ
ても学校へ毎朝すっ飛んで行ったのではないでしょ
うか。そしてベテランの先生達をサポートする態勢
が必要です。何かあると学校へ文句を言う親達が多
くなり、やる気を失っている先生が増えていること
も問題の一つです。                            
  東京家庭裁判所の元少年係調査官の浅川道雄氏は
義務教育とは国、自治体、親達大人にとっては義務
であり、子供にとっては権利である。子供は分かり
易い教育、将来役に立つ教育をしてくれと叫んでい
ると言っています。小さいときに、えこひいきや、
納得できない押し付けが心の傷となり、引きこもり
や非行の原因となっているとも言っています。    
  パチンコをしていて赤ん坊を車の中で日射病にさ
せた、妊娠して医者に煙草を止めなさいと言われミ
ルクで育てますと言う母親、泣き声がうるさいと赤
ん坊を段ボールに入れ押入れに閉じ込めるなど、育
て方を知らない親が増えています。更に未婚の母親
が増え父親のいない子育ても問題です。24時間保
育という保育所も出来、働く母親には有り難いかも
知れませんが、赤ん坊が「ハイハイ」し出す、「立
つ」そして「歩く」という感動を体験しない親が出
てきました。知り合いのおばあさんが、たまたま保
育所が休みなのでと預かった赤ん坊、あやしても笑
いの表情がない、どんな扱いをしていたのか驚いた
と言ってました。福祉が整うと人間が駄目になって
行く、この仮説が実証されないことを祈るのみです。

生活者主権の会生活者通信2002年06月号/14頁