パラレル東京

東京都小平市 小俣 一郎

 

「誰も、本気でこうなった日のことを、考えてなかったということだ」

 

これは「NHKが総力をあげてお送りする"体感 首都直下地震ウイーク"(NHKオンラインより)」の中のドラマ「パラレル東京」のDAY1で発せられた言葉ですが、皆さんはこのドラマをご覧になられたでしょうか。12月1日より1週間をかけて放送された"体感 首都直下地震ウイーク"の中の他の番組をご覧になられたでしょうか。

 

30年以内に70%の確率で発生するとされる首都直下地震。このドラマは内閣府が公表した被害想定(※)に基づき、「架空の東京=パラレル東京」で「そのとき何が起こるか」をVFX映像を用いて描いたフィクションである。

ドラマの舞台は、膨大な被害情報・映像が集まるテレビ局のニュースセンター。地震発生を“自分のこと”として捉えきれていなかったスタッフたちを「想定外」のできごとが次々に襲っていく―。

2013年の内閣府被害想定によれば、冬の夕方に都心南部でマグニチュード7.3の地震が起きた場合、風速8mの風が吹いていると、首都圏全体で死者数23千人、全壊・焼失家屋61万棟、避難者720万人、経済被害95兆円にのぼると推計されている。

 

上記は、NHKオンライン「パラレル東京」のHPの冒頭に掲載されている文章ですが、<「想定外」のできごとが次々に襲っていく>という言葉から想像できるように、その映像は、その被害は凄まじいものでした。

 「群衆雪崩」や「火災旋風」、「地震洪水」といったこれまであまり聞いてこなかったものも次々と発生し・・・。ドラマに映し出された光景は、さながら戦場のようでした。                  

 

 このドラマは、一連の番組は、「首都直下地震が起きたら一体何が起きるのか? その被害の全貌を、内閣府中央防災会議作成の被害想定に最新の研究成果を加えて紹介しつつ、1週間連続する集中編成で、どう首都直下地震を先取りして体感していただくのか、命を守るノウハウをどのように知っていただくのか、ナビゲートしていく。(NHKオンライン)」との意気込みでつくられ、「総力をあげて」の言葉通り、1週間いろいろな形で関連放送がされたが、これはNHKの危機意識の表れではないだろうか。

 

 安倍首相はこの一連の番組を見たのだろうか。見てどのように感じたのであろうか。

 

 これは「国土強靭化」とは叫びながら、2013年に想定が出された後も有効な対策を打ち出せていない安倍首相へのNHKからの警告ではないのか。

 

 3・11を契機に考え方を変えないといけないのに安倍さんにはそれができているのか。加えて近年は大型台風の襲来や豪雨も続いている。昨年、西日本豪雨の後「防災省の設置を急げ」と投稿したが、一向にその気配はない。今年の東日本の被害が起きてもである。被害が出た後に「先手先手の復興を・・・」といつも言っているが、より大切なのは、被害をできるだけ少なくするためにいかに先手先手で防災を行うかであり、限られた予算の中でいかにそれを効率的に、いろいろな知恵を集めて行うかである。

 そのためには防災省を設置し、命令系統・役割分担等を明確にし、重機等も広域でカバーし、また都道府県・市区町村が効率的に動けるように情報交換も密にして・・・。やるべきことは山ほどある。そのような体制をしっかりとつくって、必ずやって来る「首都圏直下地震」「南海トラフ地震」に備えるべきではないのか。

 NHKの番組では「今後30年以内に70%」と何回も発言していたが、想定は2013年に出されたものなのですでに6年経っており、「今後24年以内に70%」というのが正しいのだろう。残された時間は多くない。それは明日かもしれない。いや今日かもしれない。国民はそれをどう思っているのか。政府はそれを国民にどのように伝えているのか。

 

「このままいけば日本は滅びる」 

 

ドラマのDAY3ではこのような言葉さえ発せられている。

 

 2013年からの6年はずっと安倍政権である。防災を第1に国政を考えるように、それでも諸問題を解決し、発展できるように頭を切り替えないとそれこそ「日本を滅ぼした首相」という不名誉な烙印を押されることになるのではないか。