ふるさと納税制度は天下の悪法

・・・早い機会に大きく修正すべきである・・・

 

埼玉県所沢市 河登 一郎

 

・皆さまは、2008年に始まった「ふるさと納税」制度が、自治体間の返礼品競争になり、日本の寄附制度が大きく歪められている実態をご存知でしょうか。

 以下、1.ふるさと納税の現状、

    2.その問題点、

    3.改善案

 に分けて私見を申し上げたいと思います。

 

1.      ふるさと納税の現状:

ふるさと納税制度は2008年に始まり、2015年に拡充された寄附に関する税制です。

その概要は、

1)      寄附先:全国どの自治体でも良い。

生れ故郷である必要はなく、全国どの自治体に対しても寄付できる。

2)      寄付金限度:

自己負担が2千円で済む限度は、住民税の所得税割額の2割(近似的には課税所得の10%の2割)なので、所得が高い人ほど限度額も大きい。具体的には下表参照(扶養家族などで異なるので下記は目安)、

収入金額:  ふるさと納税限度額(自己負担2千円の限度):

300万円     719千円

500万円     2861千円

800万円     85120千円

1,000万円    144~176 千円

2,500万円   804849千円

1億円     3,000千円強

3)      効果:寄付金額のうち、2,000円の自己負担を除く全額が所得税及び(翌年度の)住民税から控除される。即ち、収入金額500万円の人は、2861千円の寄付に対して2659282612)千円が、収入金額1,000万円の人は144176千円を寄付しても14217414421762)千円もの金額が税額控除される。

自治体としては、ふるさと納税をして貰うために高価な返品競争をすることになる。評判の悪い例で言えば、家電製品・高価なお酒・中には商品券や車を返礼にすることもある。年収1億円の人は限度が3百万円を超えるので、自己負担2,000円で乗用車を貰ったケースもあるそうです。返礼品は当該自治体の産品でなくても良いので、産地から銘酒を買って返戻品にするケースもあります。

平成28年度の実績を見ると、日本全体のふるさと納税額は1,650億円で、黒字自治体は、宮崎県都城市(+42億円:ふるさと納税受入額―市民の他の自治体への寄付額で、返礼品経費差引前:以下同様)、静岡県焼津市(+38億円)、山形県天童市(+32億円)等、赤字自治体は横浜市(−28億円)、名古屋市(−18億円)東京都世田谷区(−16億円)、東京都港区(−15億円)と続く。これを見る限り大都市から過疎自治体へ税金が移転しているようだが、過疎だが赤字になっている自治体もある。それは裕福な市民が返礼品を求めて他の自治体に寄付する結果であり、所得の逆再配分という弊害である。この比較では黒字になっている自体も返礼品のコストを差引くと黒字は大幅減か赤字の自治体が多い。全日本で見れば返礼品コストがマイナス。

 

2.      問題点:

1)      日本では、欧米諸国に比べて「寄付文化」が育っていないと云われます。恐らく「ふるさと納税制度」は、寄付する人へのインセンティブを通じて、東京など大都市に住む高所得者が、自分が生まれ育った自治体や被災地へ還元することを狙った制度であり、併せて日本にも寄付文化の育成を狙ったものではあります。

2)      しかし、上記限度以内で寄付をして返礼品を受け取ると、所得1,000万円の人は自己負担2千円のみで170千円もの返戻品を貰えてしまう!高所得者ほど「(文字通り)儲かってしまう」のです。

3)      本来「寄付」という行為は、自分の可処分所得の一部をより高度な目的のために自分の消費を一部諦めること、ですが、私の危惧は、このようなふるさと納税制度が一般的になると「お返し」がないと寄付をし難くなるのではないか、ということです。

4)      もちろん、このような制度は、自治体の特産品を充実したり、お客である国民の意識を大切にしたり、というメリットはありますが、それにしても高所得者ほど「儲かる」のは悪しき所得の逆再配分だと思います。

5)      従って東京都杉並区、足利市、所沢市のように、首長の見識で「返品競争からは脱退する」という動きが出ても不思議ではありません。また、北海道函館市や富良野町のように、返礼品をしなかったために赤字になった自治体では「自衛上」返礼品競争に参加する自治体も出ています。反面、上記のごとく首長が「正しい」決断をした自治体では赤字額が増加するというマイナスもあります。例えば所沢市の場合、平成28年度に比べて返礼品を止めた平成29年度のふるさと納税にかかる財政収支は数億円悪化することになりそうです。

 

3.      改善策:

1)      総務省も、このような返礼品競争激化を黙って見ているわけではなく、通達で「金額の張る」返品や、商品券などは自粛;或いは返礼品は寄付額の3割程度にするようにという動きはあるものの、この程度では、やはり「高所得者ほど儲かる」というデメリットは残ります。

2)      改善策としては、一定の資格を備えたNPOへの寄付や被災地への寄付を優遇すること及び、高所得者がが「儲かる」税額控除は止めるべきではないでしょうか。

ふるさとの自治体で寄付者の名前を公表するのも良いかもしれません。

3)      私自身については、制度発足時(2008年から2010年ごろまで)にはムダなダムを止めた滋賀県や熊本県に寄付をしましたし、その後は、埼玉県を通じて認定NPO「埼玉エコリサイクル連絡会」に寄付を続けてきました。2016年度には「埼玉エコリサイクル連絡会」が認定から外れましたので、所沢市に寄付しました(2016年度までは返礼品有り)。毎年510万円寄付しましたが、私の自己負担は毎年2千円でした。         

以上