日中・太平洋戦争の総括と将来の戦争の危険について

娘や孫たちに伝えておきたいこと

      東京都港区 清弘 光生

 

日中・太平洋戦争について。

私の生まれた1937年の8月に上海事変と称する本格的な日中戦争が始まり、妻信子が生まれた194112月に日本がハワイを奇襲することで米国との太平洋戦争が始まった。

これらの戦争で日本側だけで推定310万人の軍人・民間人が死亡するという悲惨な出来事であった。私の8歳の誕生日である1945815日に日本が無条件降伏することで戦争は終わった。日本の都市は大部分が焼け野原となり、広島と長崎には非人道的な原子爆弾が投下された。また終戦直前の7月にソ連(今のロシアはその中心)が参戦したことにより満州に居た多くの居住民や軍人が殺されたり、シベリアに抑留されたり悲惨な目にあった。私は19453月まで東京に住んでいたので、悲惨な東京空襲を記憶している最後の世代になるかと思う。

この戦争について国家としきちんと総括していないため、学校教育でも明確に教えられていないと思う。

一体、なぜ日本はこのような悲惨な結果をもたらす戦争を始めてしまったのか知りたくて関係する多くの本を読んで、自分なりの結論をまとめた。

 

1.戦争に至る背景。

(1)日露戦争に日本はかろうじて勝ったのであるが、正しく国民には理解されず、日本は強いのだという傲慢な姿勢が軍部や国民の間に広まった。一方で日本に遅れて近代化の道を歩んでいた朝鮮人や中国人に対する蔑視が一般化した。

(2)その結果日本の陸海軍はうぬぼれが強くなった。特にエリート教育を受けた若手の軍人が勝手な行動をとるようになり、国の重臣を殺害するテロリズムが発生した。また政府や軍の上層部の命令に従わず勝手な行動をする風土が醸成されていた。

(3)グローバルな知識と想像力を欠除した政府や軍の幹部が明確な将来計画もなしにその場しのぎの対応をすることが多かった。

 

2.戦争の経過。

(1)満州事変:1931年、満州に駐在していた関東軍が本来の満州鉄道の防衛という役割を逸脱して満州を占拠し、後に傀儡政権による満州国を建国した。この関東軍の行動は本国政府や軍上層部の指示でなく全く現地軍の独走と謀略によるものであった。それにも関らず、政府は事後承認して、軍の出先の勝手な行動を是認する風土が出来てしまった。また、ジャーナリズムも関東軍の行動に賛同する報道をして国民を煽った。この事変が米国との太平洋戦争にいたる大元の原因である。

(2)上海事変:日本軍は資源の多いい中国北部に侵略しつつあったが、1937年の上海での戦争をきっかけに中国との本格的な戦争に突入した。政府上層部の不拡大方針にもかかわらず、戦線は拡大、長期化して中国深部の南京、武漢まで占領した。このことは米国を中国支援に向かわせた。

(3)国際連盟の脱退と日独伊三国同盟:満州国建国が国際連盟で認められなかったために連盟を脱退して、日独伊三国同盟を締結した。これはドイツと戦争状態にあった英国、その友邦の米国を敵にまわす行為であった。また日本軍は資源確保のために南アジアへの進出を図り、仏領インドシナに軍隊を派遣した。これは米国をさらに刺激して日本に対して重要な資源の石油、クズ鉄の対日禁輸措置をもたらした。

(4)日米戦争に突入:政府と、軍部の一部は米国との戦争には消極的(勝てる自信が無かった)であったが、米国に大きく依存していた石油が入らなくなったために対米国戦争は避けられぬという考えが大勢となり、1941年にハワイの真珠湾を奇襲することで対米戦が始まった。同時にマレー、シンガポールに侵入することにより英国とも戦争状態となった。

(5)終戦までの経過:当初は優勢だった戦況も、米国との資源・武器生産能力の大きな格差から1942年後半からは劣勢となり、1944年には戦争継続は不可能な状態になっていた。それにもかかわらず戦争終結への見通しもなく、無駄な消耗戦を続け、人的、物的損害が急増した。1945年の5月からソ連に和平の仲介を依頼する工作を始めたが、既にソ連は参戦を決定しており、交渉が進展しない間に7−8月に原爆投下、ソ連の参戦を招き、天皇陛下の決断によりやっと戦争終結が出来た。戦争の終結が数週間遅れなければ、広島・長崎の原爆による死傷者数十万人、ソ連の侵攻による数十万人の死傷者や60万人の軍属・軍人のシベリア抑留者は無かったはずで残念なことである。

 

3.皆が考えるべきこと。

幸い、1945年の戦争終結以来70年近くも平和が続き、衣食住も不自由ない状況が当たり前のように皆が思っているがいつまでもこの状態が続く保証はない。同じ過ちを繰り返さぬために対処することはけ費用に寄次の通りである。

(1)マスコミ(新聞、テレビ、インターネットなど)は常に大衆迎合しやすいので、みなと同じ行動をする前に、自分自身でよく考える習慣を身につける。

(2)現状の自衛隊程度の軍備は心配ないが軍備の異常な拡大には注意すること。

(3)新憲法では旧憲法に比べて政府の権限は強化されており、自衛隊も政府の管理下にあるが若手の自衛官によるテロなどの発生が起きたら警戒すべきである。

(4)戦争の防止に対して個人で対応できることは限りがあるので戦争状態になったら田舎に避難すること。大都市は攻撃目標となるので危険である。

 

4.日本に戦争を仕掛ける可能性のある国。

(1)北朝鮮:国民への情報規制、過大な軍備費、軍が強力な専制体制など戦前の日本とよく似た状態である。最近は核開発実験や、長距離ミサイルの発射など挑発的な行為が目立つ。国民の目を外部に逸らせるために日本に戦争を仕掛ける可能性がある。

(2)中国:国内の民主化を阻止するために国民の関心を外に向け、日本を含めた近隣国家に戦争を仕掛ける可能性がある。尖閣諸島での威嚇行為や、南沙諸島での人工島など挑発行為が目立つ。

 

追記:この作文は孫たちに伝えておきたくて、2年前に書いたものである。単純化するために乱暴に思えるほど事象を簡略化した。お子様やお孫さんに伝える資料としてお役に立てばと思います。