忘却のかなたから -4

東京都渋谷区 塚崎 義人

「かたよらないこころ、こだわらないこころ、とらわれないこころ、

ひろく、ひろく、もっとひろく〜〜〜」

薬師寺元管長・故高田好胤師

社会の真似る仕組み

人が想像するすべてのものは宇宙に「ある」と物理学でいわれます。さらに「ある」ものを理解するには「ない」ものの存在を指摘します。「ない」ものは「ある」ものに影響をおよぼし宇宙で大きな役割を果たし、「ない」ものと「ある」ものがはっきり宇宙に存在するとされています。

宇宙に「ある」ものと「ない」ものが存在するならば、前回 -3で時間はパラメータ(時間の中に諸現象を並べる過去⇔現在⇔未来)の役割と述べましたが、この双方向性(過去⇔現在⇔未来の時間)をもつ並列時間は過去や現在や未来が混在し大きく拡がる観念的な空間(過去・現在・未来の混在)をも生みだします。というのは人は頭の中で過去や未来の社会現象(政治・経済・言語・芸術・精神)を瞬時に取りだしたり自由に組立てたりしているからです。ある意味、私たちの社会は時間(過去⇔現在⇔未来の双方向)と空間(過去・現在・未来の混在)が同時同所に存在する時空間(時間+空間)の世界ともいえます。考え方しだいですが、宇宙の「ない」ものとは身近な生活の夢や希望や理想や目指すものを追い求める「可能性」と捉えても良いのかと、宇宙と社会は表裏の関係、宇宙の「ない」ものの存在を明らかにするには人々が生活の場で「可能性」を信じ実現しようと努力することなのかもしれません。

 

3.社会現象(政治・経済・言語・芸術・精神)-1

 社会現象については多くの方々が多岐にわたり研究し理論を展開されています。たしかに人は流行りもの流行に魅せられ、皆と同じスタイル・行動・考えを「真似る」ことで心の安定や安心感を得て、そのため人生の大半を費やすほどです。

 社会現象の変化・移行はどのような過程なのでしょう。人は見える構造(個別心理)から常に観察しているので、ある社会現象が発生するとまず人はさまざまな受け取り方(滑稽・新鮮・感動・不快・突飛・拒否・・など)をします。それは受ける人(老若男女)の環境(人種・性別・地域)や時間(人生での歳の取りかた)やレベル(体験・経験・知識の深さ)の考え(実体験の詰まった一生のモノサシ)に依存するので思考の変化はゆっくりと緩慢に時間経過とともに移行していきます。人々の生活はどちらを向いてもほとんど類似した雰囲気のライフスタイル、この類似する社会現象(真似る)も世間に広がるスピードはそれぞれ条件があり、滑稽で終わる一時的な現象や、新鮮だと大人や家庭まで受け入れられる多数的な現象、ましてやお年寄りにまで認められ浸透する大衆的な現象など興味は尽きません。

ただ見える構造(個別心理)からの観察は人の意識が個別的で個性的なためその変化の移行はほとんど気がつきにくく、どんな場合に滑稽のままで終わるのか、または広く社会に浸透していくのかは分かりません。社会現象(真似る)はさまざまな偶然性が絡みあった集まりです。 

1.  一時的現象 (うわさなど狭い範囲)

2.  多数的現象 (新鮮さなど心理的に許す範囲で受けいれられる)

3.  大衆的現象 (今までの既成の考えは変化している)

 

ほとんどの社会現象は社会で常識的といわれる考え(既成概念=慣習や流行の範囲内)で起こる現象ばかりです。たまにこの常識の枠(既成概念)からはみ出ることがあり、このはみ出し現象は劇的な発生と消滅を迎え一時的現象で終わります。 

政治・経済・言語・芸術・精神での各現象が一時的か、多数的か、大衆的かは歴史の時空間(時間と空間)の中で各時代共通する各現象の定点(最も望ましく定まった価値感)を「みえない構造(社会心理)」から日常的に定点観察をすることです。

 

次回は、社会現象(政治・経済・言語・芸術・精神)-2を考察します。