産業用大麻の活用を

東京都小平市 小俣 一郎

 

「麻(あさ)と大麻(たいま)はどこが違うのですか。」

「麻と大麻はまったく同じものです。大麻の「大」は偉大といった意味です。」

21世紀のライフスタイルを考える会の9月定例会は、『大麻を考える』をテーマに開催されたが、上記は、まったくの門外漢である私が講師の丸井弁護士にした最初の質問とそれに対する答えだ。

たしかに「大」には「尊敬・賛美の意を表す」使い方がある。どうやら「麻」と「大麻」は同じものらしいが、「麻」という言葉が持つイメージと「大麻」という言葉が持つイメージにはそれこそ天地ほどの開きがある。それは「大麻(マリファナ)」からは「麻薬」が連想されるからだ。

これについても質問したら、「麻薬とはケシの実から取れるモルヒネ等のことで、大麻は麻薬ではありません。」との答えで、大麻は「大麻取締法」で管理されているが、麻薬には別に「麻薬取締法」があるとのことだった。

ところで、この大麻草は非常に有用な植物であるらしい。しかも大昔から日本に自生し、日本の風土にもあっていて、生育も早く、戦前は日本のいたるところで栽培され、繊維や油などとしていろいろと利用されていたそうで、国がその栽培を奨励していたとのこと。しかし現在は「大麻取締法」で規制されていて、ほとんど栽培されていないらしい。なんとももったいない話である。

にわか勉強で調べると、「麻」という名のつく作物は20種類ぐらいあるそうで、古くは「大麻草」のことだったが、現在は大麻草に類似した繊維の取れる植物をそう呼ぶとのこと。そして「家庭用品品質表示法」では、繊維製品としての「麻」は「亜麻及び苧麻に限る」と定義されている。なんと、本家本元の「大麻草」はいまや繊維としての「麻」からは排除されてしまっているわけである。その大麻草から作った衣服を販売しようとしたら、現在は「ヘンプ(指定外繊維)」との商品タグをつけなければならないらしい(ヘンプとは産業用大麻の名称)。

大麻つまり麻でつくった衣服を麻と呼べない現状はどう考えてもおかしい。大麻(マリファナ)には外国産のものもあり、それが持つ薬物としての面については意見の分かれるところでもあるだろうが、繊維や紙等の素材として産業用に活用することについては多くの人は反対しないのではないだろうか。生産量日本一の栃木県では「トチギシロ」という無毒の大麻草の品種を開発し、栽培しているとも聞く。

そこでこの際、大麻に薬害があるかどうかという議論はひとまず置いて、産業用大麻(ヘンプ)については、少なくともその繊維としての利用についてはGOサインを出してはどうだろうか。

「家庭用品品質表示法」の「麻」を「亜麻、苧麻及び産業用大麻(ヘンプ)に限る」と変更し、また「大麻取締法」の名称も「麻栽培取扱法」といったものに変え、内容を一部改正し、産業用大麻活用の道を開くのである。

産業用大麻が繊維の「麻」として認められれば、大麻草でつくる繊維を大手を振って「麻」と呼ぶことができる。残念ながら「大麻」という言葉の持つイメージは良くないが、「麻」であれば、名前に「麻」の字が入る人もたくさんいるわけで、製品は広く普及していくだろう。

まずはそれにより実績をつくり、そして他の産業にも波及させていけば、古くから日本人の生活を支えてきた「大麻」が再び脚光を浴びる日も来るのではないだろうか。

この大麻草の栽培は現在免許制で、その認可権は「都道府県知事」にあるが、新たに申請しても国の顔色を見てなかなか栽培の認可が下りないのが現実らしい。それでも、北海道北見市や鳥取県智頭町などでは産業用の大麻草を栽培し「大麻で町おこし」をしていると聞く。他にも大麻草を活用して地域を活性化したいと考えているところが多くあるようだ。

ならばそのような地方の動きに力を貸すべきではないのか。安倍首相はいま「地方創生」を大看板に掲げているのだから、それにつながる産業用大麻の栽培を広く認めるよう関連法の改正を即刻行うべきではないのか。産業用大麻を活用した経済の活性化の方が、カジノの解禁よりはるかによいと思うが、いかがだろうか。