「新安全基準(設計基準/シビアアクシデント対策)骨子案」に対する意見

〜原子力規制委員会が募集したパブリックコメントに2月28日応募しました〜

埼玉県所沢市 河登 一郎

○私は原発技術に関する専門家ではありませんので、以下は一般論としての見解です。専門的な内容はありませんが、首記テーマとは密接に関係します。趣旨を織り込んで策定して頂きたい。

1.私は以下の理由で、原発は可能な限り早い時点で廃棄すべきだと考えます。

(1)天災は必ず起こります。特に日本の場合、「想定外」の規模や態様を伴う深刻な事故が繰り返して起こり得ることは説明の必要ないと思います。

(2)人災も必ず起こります。日本の工業技術が諸外国と比較して優秀で安全であることは事実だと思います。その日本でさえ、過去何十回もの事故が発生しています。多数の死者や負傷者も出ています。今回の福島の大事故は、2年を経過しても被災者対策や除染を含めて殆ど未解決です。

(3)精神異常者や政治的意図を持ったテロリストによる意図された破壊行動はありうることです。国境問題その他の紛争がエスカレートして近代的な武器で原発が直接狙い撃ちにされる可能性もゼロではありません。

2.原発は再稼働はもとより新設もすべきと云う主張があり、それなりの根拠はありますが、私は下記理由によって原発なしで対応可能と考えます。

(1)電力供給力:

@    3.11後、電力各社の供給努力と産業界及び国民の節電努力で直後の混乱を除いて原発なしで(充分)対応できました。大飯原発も不要でした。

A    電力消費の約2/3を占める産業用と業務用の料金体系を「使うほど割安」から「使うほど割高」にし、且つ年間数時間のピーク時料金を更に割高にするなどの工夫で大口需要家の合理的節電努力を促せば大量の節電/省エネが可能です。

B    化石燃料による火力発電も、工場の自家発電を含めて大幅に増えています。飛躍的な技術進歩で石炭火力さえCO2 排出は大幅に減少しています。

C    再生可能エネルギーも、固定価格買取制度が施行されてから急速に進んでいます。

D    全国の電力会社が本気で取り組めば、周波数問題を超えて日本全国をカバーする電力同士の融通制度もより柔軟に対応できます。

(2)発電コスト:

@    現行制度の下では、原発コストが比較的安いのは事実でしょう。

A    しかし、コストに算入されていない巨額の政府支出(誘致・研究開発・防災・補償などを含む)や、未だに方法さえ分らない放射性廃棄物の最終処理経費及び原発付随揚水発電コストを含む「国民負担総額」は再生可能エネルギー以上です。

B    アメリカでは最近の動きとして原発コストが高いので原発が進まないそうです。

C    コスト高の最大原因が「総括原価方式」にあることは指摘するまでもありません。

「コスト*103%」の仕組の下では、それで潤う全業界が支援するのは当然です。

D    目先の問題として原発を全廃すると、巨額の原発施設が無価値になり、これを一気に償却計上すると多くの電力会社が債務超過に陥ることが懸念されますが、制度的に対応可能です。全施設を一挙に償却計上するのではなく、改正される厳しい安全基準に従って稼働後30年までは稼働の可能性を残すなど会計上及び税制上の特別措置で対応可能です。

E    それでも巨大施設がフル稼働しなければ、電力会社のコスト上昇は避けられないでしょう。総括原価方式を廃止し、人件費を含む諸経費の徹底的な削減を行った上で、必要最小限の電力料金の値上げを国民に理解して頂く以外に方法はないと思います。

F    小売自由化と発送電分離による競争原理導入でコストダウンが実現します。

(3)資源の偏在と国産比率:

@    まさにこの点でこそ、再生可能エネルギーと省エネ/節電が最重要資源です。

A    従来、化石燃料は圧倒的に中東石油に依存してきましたが、天然ガス・シェールガス/オイル・石炭・オイルサンドなど現実的な代替ソースになっています。

B    ウランも海外に依存し埋蔵量にも限界がある点で石油と同じです。

(4)輸出可能な技術の温存:

@    再生可能エネルギーに関する新技術の可能性は無限にあります。

A    太陽光・太陽熱利用技術;海洋国家日本として洋上風力発電・潮力・海流利用技術;地熱・温泉熱利用技術;バイオ熱利用;蓄電技術;節電・省エネ商品・・・。

3.技術面では、多くの専門家が厳しい指摘をしています:

(1)国民の安全確保を旨として、厳しい指摘を活かしてください。

(2)「IAEAの基準より2倍も厳しい」、は厳しさの証明にはなりません。

3.11は、大量生産・大量消費・電力多消費・大量廃棄を前提にした社会のあり方を、原発の賛否と云う次元を超えて、根本的に見直す得難いキッカケになったと思います。

電力は、非常に公共性が高いエネルギーです。今回検討の対象になる「新安全基準骨子」は、上記目線で厳しくご検討頂きたい。

以上