生活文化と新聞・公報やチラシの視点

新宿生活研究所 浦上 登

1 折込みは現在6大紙(朝、毎、読、日、産、東)で配布手数料は統一され値上げも同時の申し合わせで 普通紙、厚紙、ハガキ付など 紙面はA版・B版のサイズによって違い、一番多い普通紙B4版1,000枚単位で3,300円+税、(1枚3,3円+税、厚紙3,8円+税)となっている。

2 公報、広報・チラシの折込みは 新聞紙に便乗して毎朝戸別配達される。過去10年間(平成1524年に於ける 新宿区内 市ヶ谷と西落合地域に限り)A紙1軒当たり毎日平均15の折込みが入り「折込広告料金表」から税引きで計算すると約70円、手数料1ヵ月で約2,000になる。

 日本の新聞発行部数は世界で断トツに多い、3つの理由 @戸別配達 A再販制度(新聞社が販売店に小売価格の指定が出来る)B折込みチラシ で成立ちチラシは日常生活の情報であり企業は広告やPRに活かす、又チラシを見たい為に新聞を取る主婦もいる日本の生活文化になっている。

3 新聞の正しい発行部数は、新聞雑誌部数公査機構である(一般社団法人)日本ABC協会(会員数約600社)によって年4回定期的に調査し公表している、ところが一流雑誌社によれば公表部数は15%も水増しになっているとの事、若い人の活字離れ、パソコンを使って無料で読める、ニュース的なものはTVやタブレット端末で見たい時に見れる といった多様なメディアの進化普及で逓減状態にあると報じているのに対し 新聞社側からの反論がない。

4 公正取引委員会は、公正のため「特殊指定」(同一紙の全国同一価格販売の定め)の撤廃を指摘するが期限が近づくと新聞協会側が新聞は 戸別配布と 再販制度 のどちらが欠けても成立たないと反対し再販制度の見直し期限が迫ると政治的に延長されて来ている。

5 新聞は公報や広報と違い「事実を報道」する使命があるので社会の公器である・・・と言われる。政治が国民の負託に応えているか、経済、社会、外交など世の中の出来事、自社に不利な事でも公開する その新聞の発行部数に対し割増感が指摘されている、逓減状態にあるのに、なぜ合同配達をしないのか? 合理化のため同業社の工場で委託印刷の例がある様に、6〜7年前にANYの協力化が検討されていたのに、専売店の調整が難しいのか、配達部数がバレテ紙面広告が安くなる恐れもある、同じ道を6社が単独でバラバラに戸別配達しているとムダが多くツケは読者に来ている。

6 配達エリアは配達が能率的に出来るように大きな道路、踏切、公園、学校といった所が境になっている、町内単位 や自治体が境ではないので、県や市・区報の折込みが隣接自治体に越境配布されており付加価値(町会や行政との共助)が出来にくい。そのため市・区報の配達に限り 23区では3〜4区だが 地元町会また シルバー人材センターに委託配達している、この方法は町内の軒数が分っておりその枚数分を印刷して渡せば能率よく全戸漏れなく行きわたりムダもない。

7 東京は政党機関紙(公明、赤旗)が独自に宅配している(正確な発行部数は不明)公報や区報にチラシ等 折込まれず行き届かない 6大紙も取っていない人の為に 何時でも見られるホームページ 区報は各出張所、市・区内各駅の改札口付近、郵便局、各専売所の店頭など公益性の場所に置いて利便性に努めているが EUの義務感の行動から見ると 既得権や前例 入札慣例 見えない癒着など検討が怠慢で、前内閣の仕分けの様な改革次第で経費節減はもとより地域活性化にも貢献する。

8 新聞専売所の部数 日や月によって新築、引越しや 取り壊し等で5軒断られて4軒増えたりして常に流動的です、一方 折込みを依頼する側の市・区報など枚数を分かり易くする為、印刷会社は1,000枚又2,000枚単位に梱包する、新聞専売所の購読者が丁度1,000戸、2,000戸なら配送車は梱包単位で置いて行けばよいが端数の場合 例えば2,638戸の場合は1,000枚梱包3個×チラシ15種類。2,000枚梱包の場合1個と1,000枚梱包1個×チラシ15種類になる。どちらも余った362枚×チラシ15種類の紙代、印刷代、配布代がムダになる。逆に1,000枚梱包1個少なくすると638戸が配達されず不完全な配布になる、チラシの余った分は余分に届く新聞の見本紙と共に定期的に夜中に回収している写真が一流雑誌に出ている。

9 顧客の配布したい地域と6大紙の配達エリアはマチマチで合致しないのが殆どでこれが問題です。折込みは新聞便乗配布なので、希望する地域指定は大まかで不可能に近くムダが多く「費用対効果」から小さな商店(多品種少量配布)はやりたくても出来ない(マーケティング活動の欠落)。

10 新聞はメディアの中で最も歴史があり 報道の品質(クオリティ)も良く信用度は高いが逓減状態に歯止めが掛からない、その点を日経では新聞の価格に千円増しで電子版と両方の特長を活かした配信配達を発売(’10/3/23)し各社も追従し始めるが大手新聞社に限られている。料金が高ければ片方でもよいが新聞の方が外される様になると 住民に不利益をもたらす恐れが出る(CSR)。

 ◆『アメリカでは地方紙が壊滅状態で休刊に追い込まれ「取材空白域」があちこちに出現するようになった。地元紙で1998年ごろ休刊になり、市役所に記者が一人も来なくなった。十数年間 市長選や市議選に記者が来ず 議会には傍聴する記者もいなかった、広域紙ロサンゼルス・タイムズの記者が隣の市で取材中、異常な高給を聞きこんでスクープしました。市の行政官(事務方トップ)は500万円だった自分の年間給与を、十数年かけて段階的に12倍の6,400万円にまで引き上げた。

  オバマ大統領の2倍です。驚いたことに、市議会の承認を得ている。警察署長の給与を3,600万円まで引き上げるなど幹部や市議をぬかりなく抱き込んだからです。住民はこの行政官が豪勢な家を建て、広大な牧場を購入したので不審に思っていた。でも地元に頼るべき新聞社はない。(朝日、20111029、P15)より』、チェック機関がなくなるとわが国でも起こり得るかも?

11 四半世紀も以前に当時の西ドイツの○○市(市名は忘れる)公報紙を一軒一軒 ポスティングしている事を知る(ヒットラーのよい知恵に学ぶ)、日本の様に新聞配達はなく 従って折込みチラシもない、漏れなく配達する真の目的は 納税者に対する行政(自治体)への理解と協力にある、キメ細かく知らせる事で公平な「権利と義務で民側の見ない・知らないは行政の失態になる、双方向のコミュニケーション活動へ進化させ民力をリードする、この「公報戦略」が後にフランス、英国、EUへ波及する、日本で公報戦略を重視したのは小泉政権(政府TV局)でよく知られる。

12 尊徳の普遍的な「報徳仕法」をベースに 大前研一氏のネットワークの重要性に着目し 現代化の可能性を「ネット配達」で起業する(本誌第15号P5参照)、新宿区内 旧牛込地域20,70048,000世帯を47人の主婦により6年10ヵ月にわたりチラシのネット配布をする、配送中に胆石で入院して中断し赤字になったが 失敗から得たものは 多様なアイデアがあって潜在性に気づく。

 多くは お客様からの要望で教えられ 今でもムダが多い、新聞に折込む画一配布ではなく 顧客主体の多様な多品種適格地指定配布です、印刷枚数の指示ができ2〜4倍と経費節減が可能になる、広告主はチラシ配布エリアが把握できて 競合する同業者の周辺地域の配布も避けられるなど。

13 チラシを上手に活かしている企業がある。新聞に本日の折込みチラシをご覧ください…チラシとの連携で カラーフルに実物大の写真入りで説明している、チラシの一部にハガキがあり切り取って受取人払いで出せる。また、B4のチラシが袋状態の 特殊な加工で広げるとB3になる1枚の折込み手数料が4,5円から3,3円になる、特殊加工代も掛かるが1枚に1,2円も掛からない。それ以上に袋を開ける時のわくわく感が商品名を覚える これもすぐに切り取って受取人払いで出せる。

14 日銀短観(全国企業短期経済観測調査)よりチラシで 先に景気がなんとなく気づく、短観の資料は1万1千社弱のデータ集約によるが、チラシも市場の影響を受けて現場に現われる。以前はニッパチ(2月8月)は少なかったが 現在は平均化して キュウリやとトマトが年中あるように 企業間競争が激しくなって閑散期が無くなる、グローバル競争は24時間 365日の無休チラシで教えられる。

15 電子チラシのシステムが大企業によって開発 食品など5万店舗が電子配信されている(日経 ’11/9/16)。危機感を感じた折込広告協会側が 新たに印刷業 広告業とも連携して全国を組織化する目的で日本折込広告業協会の設立を目指している(朝日 ’11/9/30)。電子媒体活字媒体生き残り戦略である。近未来にはアベノミクスの政策もあって郵便事業会社とも連携する予感がする。

≪生活者通信第15号(199611月発行)のP5『ポスネット』は下記のアドレスでご覧頂けます。≫

http://www.seikatsusha.org/se-tusin/se-1996/1996-015/p-05.pdf