景気条項という起爆剤―――景気浮揚の条件

千葉県柏市 峯木 貴

1.消費税とは過熱した景気を冷やすために行うもの

消費税率等の税率を上げるのは景気が過熱気味の時であって、それを抑制するためのものであるというようなことは高校の教科書にも書いてある※。また、それは緊縮財政とセットで行うとより効果的だといわれる。だから、不景気の時に税率を上げるとどうなるかは容易に想像できる。景気が過熱気味というのは、連鎖的に投資が投資を生むようなことであり、いわゆるバブルといわれる状況である。一時的に公共投資を増やして経済成長率が瞬間風速的によくなるのとは全く異なる。

 

※:政治経済(東京学習出版H16.1.10 P.99

 :新政治経済(桐原書店H19.2.28 P.119

 

消費税法の附則18条には景気条項というものがあり、消費税率アップの条件としてGDPの数値目標の名目3%、実質2%を達成すべきとしている。しかしこれも非常に怪しい数値で、この数字自体が超低成長なのである。それもその平均にはリーマンショックのような特殊事情を除くというから、ますます低いことになる。したがって、昨今の低い経済成長下でも消費税率を増税できる、というのも附則18条の解釈の一つである。

 

2.総選挙の争点は消費税増税の賛否?

過去、消費税増税に反対して当選した議員をたくさん輩出した時期があった。政治家はその味が忘れられずに、近々あるだろう総選挙にあたり、附則18条(「施行の停止」という言葉が入っている。)を盾に「消費税増税凍結」を公約に立候補することは十分に考えられる。例えば、明確に消費税増税反対と連呼する人もいるだろう。また、景気が浮上するまで消費税増税反対という人もいるだろうが、こちらも連呼しているうちに消費税増税反対となってしまうかもしれない。

 

そうなると、連鎖反応的に消費税反対派が増えるかもしれない。その時、消費税増税は必要だと説く候補者は現れるだろうか。

 

また、その時国民はどう思うだろうか。再び口当たりの良い消費税増税反対に乗せられてしまうのだろうか。あれだけもめて通した消費税法を選挙でまたひっくり返されたら、この数か月はいったいなんだったのだろう、と国民は時そう思うかもしれない。

 

3.「コンクリートから人へ」からの転換

このようなデフレ時にGDP(名目)を上げるためには公共事業や直接給付を行う、ということはよく行われている。

 

民主党による政権交代が達成された理由一つのに、「コンクリートから人へ」という理念をあげたことが考えられる。コンクリート=箱もの(公共工事)、人=社会福祉、ととらえると、「コンクリートから人へ」は「公共工事から社会福祉へ」と読み替えることができる。この流れは自民党政権末期にはすでにあったのだが、民主党ははっきりと公約に掲げた点が国民に受けたのだと思う。公共工事という間接的な恩恵より、社会福祉という直接的な恩恵を選んだともいえるだろう。

 

しかし、以下の理由で直接給付は経済効率上よくない政策だと思う。直接お金を手にした国民の多くはそのお金を貯蓄に回してしまうそうである。直接給付の乗数効果0.40.6といわれており、給付した半分しか経済を潤すことができない。この約0.5というのは、おそらく半分が貯蓄に回ってしまっているということだろう。

 

逆に、何らかの工事を伴う公共事業の場合、投資したお金は、最終的には全てが国民の手に入り、さらに投資した設備が残る。問題なのはその設備が無駄なものであったり、かつ莫大な維持費がかかる場合である。

 

4.「景気浮揚の条件」とは自主エネルギー開発の推進である

将来も無駄にならない公共投資にお金をかける必要があるが、それは自主エネルギー開発につきる。

 

従来の資源開発は未知の資源の探索であったため、当たりはずれがあり投資が無駄になることもあった。しかし、すでに存在が確認されている資源の開発であれば、莫大な研究費や工事費を投入しても無駄にならないと考えられる。昨今の日本近海に眠る資源の調査結果を見れば資源が存在することは明らかである。

 

日本はかつて自前のエネルギーはほとんど持てないと考えられていたが、最近では、以下にあげるように資源の宝庫であることが分かりつつある。本当は資源大国であったということも数年後には当たり前になるかもしれない。特に日本は世界第6位の海洋国家である。(5位はカナダ、7位はロシアでこれらの国は陸地の面積も大きいのだが資源大国である。)

  新潟沖の油田・ガス田

  南鳥島のレアアース

  太平洋側及び日本海側のメタンハイドレート

  尖閣諸島沖の油田

  沖縄県などで発見された「石油をつくる藻」

  洋上発電(風力、波力)

  海洋の様々な水産資源

  海藻等のバイオマス

 

 海洋資源以外にも以下のような有望なエネルギーもある。

  秋田県のオイルシェール

  各地の炭鉱にあるコールベッドガス

 

特に日本海側の浅い海底にあるメタンハイドレートは海底の表面付近に塊状に存在しており、すぐにでも掘削して使える状態にある。※

 

(※:メタンハイドレートは佐渡沖に多量に発見されているのだが、こともあろうに経産省がその調査を妨害しているようである。このことは私が経産省の担当官と電話で話をし、その妨害の意図を察してしまった。こんなことはあってはならないことである。さらに、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)石油調査部 伊原 賢氏が、「シェールガスの可能性と課題」という論文を発表し、世界中の非在来型ガスの可能性について言及しているが、メタンハイドレートについては一切コメントがない。これも経産省がメタンハイドレートは積極的に推し進めない、という考えへの配慮とも考えられる。)

 

メタンハイドレートを使えばGDPの数パーセントの押し上げ効果があるといわれている。また、そこから常にメタンガスが発生しておりそれが地球温暖化の原因の一つであれば、それを使用するだけで少しでも和らげることとなるだろう。

 

ただし、この日本近海の資源は韓国(竹島周辺)、ロシア(北方領土周辺)、中国(尖閣諸島周辺)と近隣諸国の利害とぶつかる可能性があるため、注意が必要である。しかし、紛争地帯ではない日本の極近海(竹島ではなく佐渡島周辺とか、北方領土ではなく北海道本島側とか)で開発すれば全く問題はないはずである。

 

自主エネルギーが開発できれば景気回復に弾みが着き、景気は自動的に浮揚するだろう。何しろ、自主エネルギーには経済的な効果(国内需要への対応及び輸出による外貨獲得)に加え、国民の自信につながる力があるからである。また、もし原発によるエネルギーが自主エネルギーにより確保できれば、すぐにでも脱原発は達成できるだろう。