憲法改正のハードルは高い

東京都小平市 小俣 一郎

現在、橋下大阪市長はそれこそ飛ぶ鳥を落とす勢いであるが、その橋下氏が代表を務める「大阪維新の会」の国政進出に向けての次期衆議院選挙の公約になる『船中八策』の骨子が2月13日に明らかになった。

そこには、道州制ばかりでなく、参議院の廃止や首相公選制まで含まれたおり、非常に急進的なものとなっている。

これまですり寄っていた政党も、そのあまりの過激さに「警戒感も広がりはじめた」と新聞は報じている。また廃止を宣告された参議院議員の反発は強い。

私は、今の強すぎる参議院の存在は大問題であると常々主張し、その改革の必要性も当然強く感じている。しかし、では廃止までいけるかと言うと、首をかしげざるを得ない。それはあまりにもハードルが高いからだ。

憲法の改正については、憲法第96条の1項に、「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」と規定されている。つまり、参議院を廃止したくても、その参議院の3分の2の議員が賛成しなければ、発議さえできないのである。

かつて小泉さんは参議院で否決された郵政民営化法案を、衆議院を解散して「是か非か」と問い、衆議院で与党が3分の2以上の議席を獲得することで強引に参議院をねじ伏せた。一般の法律は、参議院が反対しても衆議院が3分の2以上の多数で再可決すれば成立するからだ。

しかし憲法は違う。解散がなく、6年の任期があり、しかも半数改選という参議院で3分の2以上の多数を得るのは不可能に近い。

そのせいか、その後「参議院の廃止をも視野に入れた抜本的改革」と、参議院に対するトーンはやや下がっているが、憲法改正の旗自体は依然掲げ続けている。

しかし掲げた他の内容にしても、憲法を改正しようとすれば、自衛隊とか天皇制とかいろいろな別の問題もここぞとばかりに必ず出てくるはずだ。そして結局まとまりがつかなくなってしまうだろう。

私がなぜ「国」と「都道府県」の間に、新たな、大きな「地方自治体」をつくることで大改革をすべきだと提案しているかと言えば、憲法改正にまで踏み込まなくてもいいからだ。

 

憲法に規定された地方自治に関する条文は、第92条「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」、第93条@「地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。」A「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」と、第94条[地方公共団体の権能]、第95条[特別法の住民投票]の4つである。

 

国と都道府県の間に新たな地方公共団体をつくり、そこに国の内政に関する権限の多くを移してしまう『大統領制型東西2大道州制』ならば、憲法を変えずに大改革ができる。

東西日本州の知事という大きな地方自治体の長は、直接住民がこれを選挙するわけで、これは「疑似首相公選制」とも言えるのではないか。

憲法ではない一般の法律であれば、衆議院で3分の2の議員が賛成すれば成立する。衆議院には解散があるので、それこそ次の総選挙でそれを主張する政党が3分の2を取れは、理論的にはその方向へ変えていくことができる。

国から多くの権限が東日本州・西日本州に移ってしまえば、当然、それに比例して参議院の影響力も小さくなる。また、参議院の選挙区のあり方を見直せば、衆議院の足を引っ張るのではなく、衆議院の行き過ぎを防ぎ、足りないところを補うという参議院本来の姿に戻すこともできるだろう。

 

首相と東日本州・西日本州の知事という「3人のリーダーで日本を動かす」ように日本のしくみを変えることが、日本の政治が安定し、前進する近道ではないだろうか。

首相一人が重責を担うのではなく、3人で役割分担をする。それぞれの役割がはっきりすれば、国民もふさわしい人を選びやすくなる。