TPPに関する議論から

東京都文京区 岡戸 知裕

TTPに関する国内世論は割れているように見えるが、常識から判断して、すでに答えが出ていると思う。

消費者と生産者という視点からみると、一部の生産者にとって不利な状況が出現する可能性が声高に言われて、大多数の消費者の声が無視されている。

日本の政治の弱点は少数の生産者サイドにたった行政が行われ、静かなる消費者が無視されるという点だ。またそれが需要が増えない大きな原因でもある、つまり消費が喚起されない不活性な状況に絶えず置かれるからだが。別の言い方をすれば消費者の選択する権利が剥奪されているともいえる。日本のビーフを買うのか、米国のビーフを買うのかは消費者が決めるべき問題だ、つまり貧乏人は米国産で金持ちは日本産でも良いのだ。それによりビーフ全体の消費が増え日本の農家も潤うわけだ。

オレンジの自由化の時もみかん農家に大きな影響が及ぶといって農業団体の大きな反対があったが蓋をあけてみればオレンジもみかんも売れているのが現実だ。フルーツ全体のパイを拡大する意味がオレンジの自由化にあったのではないか、今になって考えれば。グレープフルーツの自由化のときも馬鹿げた反対意見がでていたことも思いだすべきだろう。

アメリカの自動車産業も日本の自動車の進出で大きな打撃を被っているわけだが、車は売らせてくれ、でもビーフは買わないでは大人の議論にはならないだろう。

努力なしで生き残ろうというのは土台無理な話だ。

 

自由貿易の推進が日本を救う

今のダメ日本を立て直すにはTPPしかないだろう。

日本の自動車産業のように競争力のある産業を持つ国はやはり自由貿易を推進しないと自国の発展に繋がらない。

農業団体の護送船団方式による一軒も落後者を出さないという頑な方針は日本を滅ぼすことに繋がる。農家すべてがJAと関係があるのではなく自助努力が必要だ。

 

■“木を見て森を見ず”になっては日本の悲劇を繰り返すことに繋がる。

太平洋戦争という悲劇の遠因の一つに、大正の軍縮があるが、軍縮による平和と繁栄へという世界の潮流は、帝国陸軍にとっては死活問題であった。

この動きを封じる必要に迫られていた帝国陸軍は、ロシアや米国との軍事的緊張を意図的に作る必要に迫られ満州事変が引き起こした。帝国陸軍の御都合が優先したのである。

一部の利益団体、この場合日本の国防を担う陸軍の利益が何より優先された。

今でいえば財務省、厚生労働省、国土交通省、農林水産省、全農 日本医師会、等々・・・特定の利益を代表する団体の御都合主義と暴走で日本の国益が蹂躙されている。

ダメ日本になった原因はここにある。

昭和天皇はかねてより国際協調主義を唱えられていた。満州事変を引き起こした現場責任者河本大佐の罷免を求め、かつ当時の陸軍出身の首相田中義一を事実上更迭している。

満州事変は日支事変の導火線となり、日支事変は太平洋戦争の引き金となった。

つまり330万人の死者という途方もない損失は帝国陸軍の御都合主義に端を発している。

 

■競争原理の導入 − 自助努力

日本の農業は保護によって発展するものではない。いかなる産業においてでもある。

競争がいやならばミクロネシアの楽園で暮らすことをお勧めする。

海外との競争によって産業は力強くなるのだ、つまりの明治の開国と同じで尊王攘夷から富国強兵思想への転換が必要だ。

もし日本が尊王攘夷で固まっていたら、今頃対馬と北海道はロシア領土となり、沖縄は中国領土になっていただろう。

牛肉の神戸牛や松阪牛など海外でも有名なブランドを持ち、米においてもコシヒカリ、ササニシキ、ブドウの巨峰、宮崎のマンゴなど既にブランドとして充分海外と競争できる農業製品はいくらでもある。確かに中山間地の米農家もあるだろうが要するに味で勝負すべきだ。ぶら下がりで食い続ける時代ではない。

 

■味という最も重要な視点が現在のTPP議論の中で欠如している

今のTPP問題を議論するときに品質や味についての議論がないのが不思議と言える。食品はすべて味を含めた品質と値段できまるのである、つまりコストに見合った味があれば食品は売れるのだ。

料理の世界でも同じでブランドと味があれば帝国ホテルの”レ・セゾン”ようにミシュラン一つ星でも夕食で一人平均5万円を支払うお客も存在するのだ。

恐らく農業開国となれば貧乏人が米国米を食べ金持ちがコシヒカリを食べるようになるだろう。年金生活者や貧乏人にとっては朗報と思う、つまりキロ500円の米が200円以下で買えるのであれば家計が助かろうというものだ。

既得権という魔物を取り払わない限り日本に未来はない。これには丁度応仁の乱を平定した織田信長のような強力なリーダーシップが必要になる。

今後の首相は民意を背景とした各個撃破以外に方策はないと思う。

首相に人気が無ければTPPのように政治的なパワーがある少数派を撃破できないだろうが、小泉氏のような人気があれば可能だ、まずは増税ありきではなく予算の大幅な削減と役人の縮減と減給というところから始めるのが民主党政権の生き残り策だろう。

 

■少数意見が幅を利かす

亀井静香の国民新党など最も自民党的な少数政党が幅を利かせ日本の国益をすこぶる損なっている。

国には既にばら撒く金がない以上これからは国民の自助努力で解決してゆく以外ないしそれがベストウェイだと思う。

一般の中小企業はすべて自助努力で生きており、その中からホンダのような会社が出現し日本の産業をリードしてゆくのだ。

もうひとつ例を上げれば、石原知事が行った排出ガス規制だが、一時期中小零細のトラック業者がエアクリーナーを購入できず倒産した例もあったようだ。

断行した結果東京の空気は劇的に良くなっている。これも少数意見を聞いていたら都内で排出ガス訴訟や呼吸器系疾患の患者が続出していたと思う。

やはり今の指導者は織田信長的でないとダメ日本を立ち直らせることができない。

 

■中国との関係

対中国よりも対米を優先させるべきだ、理由は日本の安全保障という観点からだがこれが戦前であれば現在の中国は充分仮想敵国だ、今後中国の軍事的な脅威に日本はさらされてゆく。平和ボケの日本人には国際政治とは何かを知る良い機会を中国が与えてくれている。

歴史的にみると日本が中国を蹂躙したという厳然とした事実がある。特に中国で行った三光作戦は中国人皆殺し作戦で、これは丁度ヒトラーのバルバロッサ作戦のアジア版だと言える。(西のフランス人は同じ人種だが、東のスラブ人は人種的に劣等であり皆殺しにすべきというヒトラーの発想)特に中国共産党の支配する地域で行われた関係から戦後の日中関係に大きな影響を及ぼしている、中国共産党が公認する教科書にはかなり誇張された歴史的な事実が記載されているのは良い例だ。

虐殺は末代まで消えない傷を歴史の中に刻みこみ、何も知らない戦後の日本人は歴史の教訓をいやでも思い知らされるだろう。