豊かな社会

東京都文京区 岡戸 知裕

太平洋戦争は明治体制の自己崩壊現象ともいえる。

明治国家のスローガンとしての富国強兵は当時の列強と対峙するに最も相応しい国策であった。しかし昭和に入って民族自決という第一次大戦後の新たなる潮流を見過ごして、自己変革を怠った結果が太平洋戦争という未曽有の大災害を日本にもたらした。

靖国の英霊に申し訳が立たないという理由から中国大陸からの撤兵を拒み、対米開戦に踏み切った結果、英霊の犠牲により取得した台湾、カラフト、朝鮮、満州、千島を一挙に失ってしまった。つまり昭和20年が終わりの終わりであったわけだ。

変革・改革を受け入れないものは滅び去るという歴史の定理は現代においても永田町/霞が関に理解されていない。

今のリーダーはやはり織田信長タイプの人でないと務まらない。

過去には小泉氏がもっとも近いイメージであるが、はたして今の政党の中にそういう人材がいるかどうかだ。自民党の谷垣氏など最悪の選択肢になるに違いない。

これからの日本の進むべき本当の道を指し示すことができる人でないといけない。

織田信長は、重農主義から重商主義への転換、楽市楽座に始まる関所の撤廃、自由競争の推進、市場の開放、農業と軍役の分離など新しい時代を切り開いた。

今の永田町/霞が関の頭脳は応仁の乱以前の状態だろう。昔の楽市楽座、今の高速道路無料化を棚上げにしている。

信長以前、伊勢街道には62の関所があったが今も関所の替りに料金所を設けて通行を阻害している。伊勢神宮へ通じる高速の交通量が無料化実験の結果2倍になっているが神宮のおみやげものやから始まる現地の商業施設は潤っているはずだ。こういった結果については何ら報道されていないのは不思議と言わざるを得ない。1000円高速で東京から車が押し寄せた青森県大間市など経済効果はかなりあったはずだ。

高速道路無料化に反対しているのは、殆ど60歳以上というから、要するに車を手放した年代である。殆ど景気対策などなかった民主党のいわば唯一の看板政策をいとも簡単に下ろして良いものか。むしろ切り込むべきは道路公団のファミリー企業ではないか、公団と国土交通省の天下り団体に莫大な資金が流れており、こういった資金を活用すれば料金半額も可能になるだろう。とにかく現代の関所を取り払う必要ありだ。

新しい時代のヴィジョンが政治家/ メディアに全く見えていない。

長らく内需拡大という言葉が叫ばれながら、曲解されてバブルに至ってしまっているが真の内需拡大とは以下の政策だろう。

これからはQuality of Life の向上以外にない。

つまり生活の質だ、大前さん流にいえば生活者主権の時代ともいえるか。

 

1.家の大きさ

内需拡大に最も資するものは、車ではなく住宅だろう。

あるイケアの幹部から聞いた話だが、イケアが日本に進出した結果分かったことは、家が狭い為に日本人があまり家具に興味を持たないことだそうだ。よって数字に結びついていないということだ。

対策として国有地や都有地などを活用した定期借地権つきマンションを都内で民間の不動産業者に建設させてはどうか?当然価格的に下がるはずで100平米のマンションにすれば家具は入り、車も税金を安くすれば2台可能になる。米国のワシントンのタクシー運転手から聞いた話だが、米国では貧乏人は車1台しかないそうだ。それでは果たして日本は?

長らくトヨタの国内事業は赤字を続け、米国の黒字で帳尻を合わせてきたが、米国市場でのクレームで一挙に赤字に転落してしまった。

日本の貿易黒字の大半を稼ぐ虎の子の自動車産業は実は国内ですべて赤字になっているようだ。国内では保有コストや走行コストが高く車離れがおきている。

収入が上がらない中で生活コストが上がれば車などの耐久消費財などは敬遠されることになり、国内景気にも悪い影響が及ぶ。自動車産業ほど裾野の広い産業はないのだが、日本は長らく自動車産業をして国内事業を赤字にさせてしまっている。

日本はこれから何で食ってゆくのかはっきりさせる必要ありだ。

 

2.セカンドハウス

ウィーンでは殆どすべての住人が郊外にセカンドハウスをもっている。

週末は郊外が暮らそうということだ。

ニュージーランドでは殆どのファミリーがボートを持っているそうだ。

これが成熟した社会であると思う、今の日本は輸出で稼ぐことばかりに血眼になっており、Quality of Lifeという概念が社会的に出来上がっていない。

これでは内需拡大といっても掛け声だけに終わってしまう。

例えば郊外にセカンドハウスをもったとして毎週末移動となると高速道路料金のバカ高さに泣かされることになる。又東名でも3車線というお粗末さには呆れるほかない。

つまり今の日本の政策は1軒の小さな家に閉じ込めて毎日働きづめに働かせてそこから税金を取ろうという貧困なる発想がすべての起点になっている。

これでは成熟化した社会とも豊かな社会とも言えない。

それでいて景気が悪いと嘆いているわけだが、景気を良くするには自分たちのライフスタイルを変えないと良くならない。

セカンドハウス振興法案でもつくってはどうか、おそらくたちどころに景気は回復するはずだ。但しその前提条件として高速道路無料化が必要になるが。

また地方の小さな漁港などはヨットハーバーにすれば新たにボート産業なるものができて景気に良い影響をもたらすと思う。

 

3.高速道路無料化

無料化といっても米国、英国、ドイツでは当たり前の話なのだが。

つまりガソリン税で高速道路の建設費をすでに支払っているからだが。

恐らく大多数の国民がメディア、官僚、政治家を含めて海外の生活を知らないという日本の特殊事情がある。日本のように高額な料金を課している国はない。

これは人や物の移動を阻害しようとしていることに他ならない。

これで景気が悪いといっているのであるから開いた口が塞がらない。

恐らくウィーンで市内から郊外へ通ずるアウトバーンに日本の料金を適用しようとしたら暴動がおきるだろう。

オーストリアのアウトバーンは有料であるが、年間の7000円程度だ。

証紙をフロントウィンドウに貼るだけで良く、日本のようにコンピューター業界を支援するようなETCなどない。有料といってもこのレベルだろう。

日本の料金の高さには唖然とするばかりだ。

この料金の馬鹿高さは道路公団の仕組みにある、つまりファミリー企業と称する公団の天下り企業が高速道路のパーキングエリアにある商業施設の権利を抑えておりそこから莫大な利益を上げているわけだ。これがどこへ消えているかだ。

この莫大な利益があれば本来は無料化とはいかずともかなり安くなるはずで、この癒着を破壊する以外にはないと思う。これには役人は大反対するだろうが信長的リーダーシップで突破する以外ないだろう。また首都高速もすでに償還済みなのでこれも無料化可能な路線なのだ。無料化により商業の振興は進むはずだ。

無料化すると混むという議論があるが、これも車を運転したことにない人の意見だ。

パリの環状線など8車線あるが絶えず混雑している、これを有料にして車を町に下ろしたら大気汚染問題になるだろう。

 

4.地方の振興

今までは富国強兵よろしく馬鹿の一つ覚えで国家財政のバラマキにより地方のキツネとタヌキの為の道路をつくり続けてきたわけであるが、財政がすでにパンク状態だ。

地方に不足しているのは金ではなく、知恵なのだ。

例えば九州の湯布院や黒川温泉など予約が取れないような状態だ。

夕張でもメロンという切り札がある。そういった知恵が働かない地域は岩手県だろう。

つまり有力議員による国のバラマキに大きく依存しており、そこから脱却できないでいる。これは議員と地方の心中現象といえる。生きている内に頭を使えとはこのことだ。

知恵のある地方と大都市圏を鉄道と道路で結べが良いのだが、問題は料金のバカ高さだ。新幹線と高速道路は交通インフラ同士の競争をさせて安くさせるべきだろう。飛行機もしかりで安くなれば北海道の夏の観光客は飛躍的に増えるはずだ。つまり競争原理の導入であり、役人が一番いやがる言葉だろう。

内需拡大は観光産業の売り上げ拡大に他ならない。

 

5.休暇

今の日本は輸出頼みで休みなく刻苦勉励で稼ぐというライフスタイルが当たり前という観念を持っている。これは富国強兵思想と同じで時代が変わればヴィジョンは変わるのだ。馬鹿の一つ覚えで続けようとすれば大変な惨禍を招くことになる。

連続休暇で2週間は最低とれるような社会体制を目指すべきだろう。

これは法律化すべきだ。これで日本の内需拡大も本格的になり地方も潤うはずだ。

馬鹿の一つ覚えで働いてばかりでは景気は良くならないのだ。