官僚と闘う政治の注目情報詳細200912月)

 

1.ナーンにもしていない霞が関の次官、局長はとっとと辞めろ!

20091113日 日刊ゲンダイ)

「真剣に転職を考え始めた」

 こういう官僚が増えている。それも、12日まではふんぞり返っていた高級官僚だ。局長、審議官、次官クラスの役人だ。民主党政権になったとたん、彼らの仕事は全くなくなってしまったのである。

「事務次官会議が廃止になり、次官会見も禁止になった。さらに天下りにも厳しい目が光る。次官の仕事なんて、OB人事の調整ですから、仕事はまるっきりなくなってしまったんです」(霞が関事情通)

 事情は局長クラスでも同じだ。局長の仕事なんて、国会答弁がメーンだ。それがなくなったのだから、仕事ゼロ。ナーンにもやることがないのだ。

「国交省の前原大臣はさすがに次官を哀れに思ったのか、JALの社長の呼び出しには次官を連絡役にしたりしている。メッセンジャーだけど、次官は喜々としてやっている。そうでもしない限り、本当に仕事がないんです。民主党政権は少なくとも10年くらい続く。いま50歳以上の官僚は真剣に転職を考えているはずです」(同事情通)

 12日まで床の間を背にした高級官僚が、いまや窓際族なのだから、ドラマチックだ。最近はこうしたシニアのキャリア官僚向けの転職サービス会社も繁盛している。時代は変われば変わるものだが、そんな中、「次官も局長も廃止にしたらいい」と唱えているのが、みんなの党代表の渡辺喜美代議士だ。

「仕事がないのだから、役職を廃止してしまえばいいのです。そうすれば年俸2000万円クラスの役人が300人くらいいなくなる。それから、本当に必要な人材を政治任用して雇い、国家戦略局などに配置すればいいのです。天下り問題の根本は次官らの仲間意識です。霞が関の弊害は年功序列の人事システムです。これらを廃止すれば、大胆な改革ができるのです」

 高級官僚も、このままやることもなく、無為に何年間も過ごすのであれば、自分から辞めたらどうだ。いったん、年功序列の役職を外れて、新たな職を探す。それが国家戦略局や行政刷新会議の仕事になるのであれば、それもいい。これくらいの覚悟を決めないと、税金ドロボーと言われるだけだ。

 

 

2.嘱託天下り6ポスト廃止 厚労省

20091118日 産経新聞)

 長妻昭厚生労働相は17日の記者会見で、厚労省所管の3つの独立行政法人(独法)に国家公務員OB6人が嘱託の形で役員待遇を受けているとして、6人の天下りポストを年内に廃止することを明らかにした。さらに、これまでの独法に対する給与水準などの調査対象が役員を中心にしていたことから、部課長級ポストへの天下りの実態も調査する方針を示した。

 長妻氏は「嘱託という形で役員待遇的な天下りをしている方がいる。非常に問題だ」と指摘し、「すべての厚労省所管の独法で、部長、課長の天下りの年収などを至急まとめるよう指示した」と述べた。

 不透明な天下りが発覚したのは「雇用・能力開発機構」「高齢・障害者雇用支援機構」「労働政策研究・研修機構」。

 雇用・能力開発機構では、財務省、厚労省から1人ずつ、年収はそれぞれ800万〜900万円程度で、嘱託ポストを“隠れみの”に役員並みの高額報酬を得ていた。高齢・障害者雇用支援機構は財務省と厚労省、総務省から1人ずつ、労働政策研究・研修機構は内閣府から1人を、それぞれ雇用していた。

 

 

3.事業仕分けへの批判に異議あり! 霞が関牽制の意味は大きい

20091119日 DIAMOND online 上杉隆)

 きのう(1117日)、行政刷新会議の事業仕分けの前半が終了した。

 新聞・テレビ等ではそれ程高い評価を得ていないようだが、全5日間を取材した筆者の率直な感想を述べれば、十分効果的な取り組みだったと思う。大まかに言えば、メディアから仕分け作業への批判は、次の三点に集約される。

1)仕分け人は、“公開処刑”のごとく問答無用に事業を削っている。

2)予算規模約95兆円からすれば、13000億円(基金を含む)というわずかな額しか節約できていない。

3447事業の選択は財務省主導で行われ、作業自体もその手の平の上で踊らされている。

 もっともであるかのようなこの種の批判だが、現場で取材している者からすれば違和感を覚えざるを得ない。

 まず、“公開処刑”についてだが、先週の当コラムでも触れた通り、事業仕分けの作業はそれほど単純なものではない。

 仕分け自体に絶対的な基準が存在しないのは確かだが、作業工程はルール化され、それに沿って評価が下される。評決は、厳密ではないものの、基本的には多数決によってなされる。少なくとも「問答無用」という言葉は適当ではない。

 おそらく“公開処刑”という批判が新聞等で広まったのは、初日の蓮舫議員と神田道子・国立女性教育会館理事長との激しいやり取り等があったからだろう。それが繰り返しテレビメディア等で流され、あたかも作業全体でそうした応酬が繰り返されているかのような印象が広まったのだろう。

 だが、会場である国立印刷局市ヶ谷センターに足を運べば一目瞭然だ。地方在住者は、インターネットによる同時中継を視聴してもいいだろう。

 連日、朝9時から夜8時まで、同時に3つのワーキンググループで繰り返されている作業では、激しいやり取りなどはむしろ例外的である。ほとんどの仕分け作業が淡々、粛々と進められている。

 さらに言えば、「廃止」、「緊縮」、「見送り」といった形で事業を削っているのは事実だが、評決の末、「認定」という結果も当然にあるのだ。

 (2)の削減額が少ないという批判も一面的な捉え方だ。

 前半戦が終わった段階での削減額は、4700億円、それに基金の返還分を併せれば、1兆円を超えるという結果になっている。後半の4日間で3兆円は厳しいという見方が一般的なのは確かだ。

 当初、鳩山首相も示した一般会計の80兆円台までの削減というのは、難しくなっている。

予算編成の見直しはこれからが本番

 だが、よく考えてもらいたい。そもそも今回の予算案は、自民党政権下で編まれたものであり、通常ならばほとんど削減の余地もなく、ほぼ要求どおりに認められたものだ。 それを考えれば、1兆円の削減といえども決して小さくない。

 何よりも考えうる効果として、今後、霞が関がこれまでのような大雑把な概算要求をすることへの強い牽制になったとみられる。事業仕分けで国民の目に晒され、政治から追及される可能性がある以上、杜撰な概算要求に一定の歯止めがかかるとみるのが普通ではないか。

 加えて、テレビ・コメンテーターの中には、「わずか1兆円」というような発言をする者もいる、1兆円は決して小さな金額ではないことを明言しよう。元来、減る予定のなかった予算を削ったのであるのだから、そこは素直に評価してもいいのではないか。

 それに事業仕分けは、予算の総組み換えではない。民主党にとって、公約の柱である予算編成の抜本的な見直しは、これからが本番なのである。

 なにもしなかったこれまでの自民党政府よりも、ずっとマシなのである。

 (3)についてだが、確かに財務省主導であることは間違いない。しかし、そもそもこれまでの各省庁からの概算要求の方式を振り返れば、改善されたとみるのが普通ではないだろうか。

 自民党政権では、霞が関の要求した予算に沿って折衝がされ、それが本予算になってきた。今回はその自由自在であった予算案に、政治家の意思が加わり、一般公開での監視の目が入り、なにしろ議論の末の評決さえある。

 確かに各ワーキンググループには、財務省主計局からスタッフが必ず加わっている。だが、作業では彼らだけが独走できる状態にはない。最初の叩き台の提供と、操作するための方向付けをし、後は議論に任せるのが関の山だ。

 これまでの大蔵折衝と比較しても、削減を目指す主計官の意向のみが反映されるわけではなく、関与する人数を増やし、完全公開にしたことで財務省の力は相対的に減少しているとみられる。

 確かに、447事業は財務省の選んだものかもしれない。だが今後は、残りの約2000事業も対象となる可能性は否定できず、その中には、当然に財務省の事業も含まれている。

 むしろ財務省の狙いは、これまでほとんど手を出すことのできなかった特別会計の方だ。財務省支配を気にするのならば、メディアは事業仕分けではなく、予算の組み替えをチェックすべきではないだろうか。

 行政刷新会議の事業仕分けは新しい試みである。問題は、それを報じるメディアがそこに追いついていないということではないか。

 情報の官僚支配から脱せず、財務省の手の平で踊っているのは新聞・テレビなどの既存メディアの方なのかもしれない。

 

 

4.長妻氏、厚労省改革に熱 大臣就任2ヵ月 省内には不満も

20091119日 朝日新聞)

 鳩山内閣の閣僚がマニフェストで約束した政策の実現に苦闘する中、「ミスター年金」として国民の支持が高い長妻昭厚生労働相も例外ではない。就任2ヵ月が過ぎたが、「子ども手当」の制度設計は進まず、期待された年金記録問題も解決の道筋が見えない。だが、こと「官僚改革」では、大ナタをふるう姿勢が目立っている。

 18日の衆院厚生労働委員会。長妻氏の答弁で力が入ったのは、行政刷新会議による「事業仕分け」の感想を聞かれたところだった。「非常に画期的な取り組みだ。厚労省分野の指摘を踏まえて今後どういう形にしていくのか、私なりの結論を出したい」

 来年度予算の要求額28兆円の厚労省の事業は、廃止・見直しが相次いだ。結果に不満を漏らす閣僚もいるが、長妻氏は「政権交代の象徴だ」と評価。省内に「行政刷新会議に指摘される前に自ら多く出せば、世間からも厚労省は信用できると言われる」とハッパをかけたほどだ。

 長妻氏は、多くの課題への対処方針をなかなか示さず「ミスター検討中」とも揶揄されるが、官僚改革は別だ。

 就任直後にまず手がけたのは人事評価制度の見直しで、評価基準に「コスト意識・ムダ排除」などを設けた。厚労省OBの天下りにも厳しい目を向け、指定ポストを二つ減らしたことに加え、天下り団体への補助金などの拠出を約1千億円削ることを決めた。

 今月17日付の朝日新聞で厚労省所管の3法人に同省OBが嘱託で天下りしていた問題が報じられると、「年内廃止」を表明。さらに他の法人にも対象を広げて実態調査に乗り出すよう指示するなど、対応の素早さが際立つ。

 根底には「役所文化を変えたい」という思いがある。同省に対する苦情などを受け、長妻氏は内部調査を求める指示書を乱発。「大臣質問主意書」と揶揄されているものだが、これも外部から官僚の意識を変える狙いからだ。ただ、こうした徹底ぶりが官僚との溝にもつながっている。

 長妻氏から求められた資料を出せなかったある課長は「処分」が言い渡され、始末書を書かされた。年金記録の確認のため、社会保険庁が発送した「ねんきん特別便」が住所不明などで大量に返ってきた問題では「責任者を明確にする」(長妻氏)として、記者会見の場で同庁長官らに陳謝させた。こうした姿勢に、省内からは「まるで子ども扱い」(幹部)という不満も漏れている。

 政策課題で実現の見通しが立ったのは、生活保護世帯に対する母子加算を年内に復活させることぐらい。政策の実現には官僚の協力が欠かせないが、官僚側は知恵を出すことに消極姿勢も見られる。

 どのように官僚を活用していくのか。長妻氏は、こう考える。「職員の意識全体を変え、私が他省庁や自治体との調整など政治家本来の仕事に専従できた時、厚労省は最強の役所になる」

(石塚広志)

 

 

5.予算確保へムダ排除 厚労相 公約の重圧

20091121日 日本経済新聞「政治主導 政策は変わるか」欄)

 開催地の東京・市ヶ谷にちなんで官僚たちが「東京裁判」と呼ぶ行政刷新会議の事業仕分け。厚生労働省の予算を対象にした17日の会合では仕分け人たちが肩透かしを食らう場面があった。財務省が示した問題点について、議論の前に厚労省自らが改革と予算削減を表明したのだ。

 

仕分け人に先手

 対象は独立行政法人「高齢・障害者雇用支援機構」で、「税金をムダ遣いする天下り団体」との批判が強まっていた。厚労省はOBの平均年収を約100万円削減することを表明。機先を制され、勢いをそがれた仕分け人の取りまとめ役、参院議員、尾立源幸(46)は「厚労省が内部で検討し、改善したことに敬意を表する」と結んだ。

 仕分け作業日に間に合うように指示したのは厚労相の長妻昭(49)だ。「自ら徹底的にムダを排除してこそ、必要な予算をつけてもらえる」との意識が背景にある。

 厚労省の来年度予算の概算要求は288千億円。子ども手当などを盛り込んだことで前年度より37千億円も膨張した。ほかに金額を明示しない「事項要求」も11項目あり、これらも合算すると増加分は5兆円超に上る。

 ただ財務省の姿勢は厳しい。長妻は10月、生活保護の母子加算復活を巡って数度にわたって財務相の藤井裕久(77)と折衝したものの、折り合いが付けられず、首相に直談判する“裏技”に出た。「この程度のことで首相に裁定を仰ぐなんてやり過ぎだ」。財務省からは批判が噴出した。

 「刷新会議に負けるな」。長妻はハッパをかける。予算を守れ、という意味ではない。真意は「刷新会議よりも多くのムダを自主的に洗い出せ」。長妻は自らを奮い立たせるように「身内に厳しい姿勢」をみせる。

 しかし、改革は一筋縄ではいかない。106日、長妻は国家公務員OBが在籍する所管法人に対する補助金の見直しを指示。2割削減を基本に、OB5代続けて役員に就いている法人には全廃を求めた。

 これに対する官僚の答えはふるっていた。個々の法人の削減率はまちまちだったが、平均すると2割削減を求めた92法人では10.3%100%カットを求めた22法人では51.1%。「大臣要求の半分」に収める作為ではないか・・・・・・。長妻は満足せず、その後も事務次官の水谷邦雄(60)を対策本部のトップに据え、上積みを求めている。

 野党時代には「ミスター年金」として人気を誇った長妻。だが、厚労相に就くと現実の壁に直面し、「ミスター検討中」とのあだ名がついた。後期高齢者医療制度では野党時代にうたっていたような即時廃止には踏み切れず、国会で批判された。長妻はいま、天下り法人の改革、ムダ排除などに活路を見いだそうとしている。

 

協調モード一変

「ミスター検討中からパワハラ大臣だよ」。最近、厚労省職員の間でこんな長妻評が漏れるようになった。「大臣に『クビだ』と宣告され、眠れなくなった」「『長妻』という名前を聞くと帯状疱疹(ほうしん)が出る」。流れるマイナス評は改革に抵抗する官僚たちのネガティブキャンペーンの側面の一方で、長妻自身が当初の協調モードを脱し、職員に厳しく接するようになってきた現実も映し出す。

民主党がマニフェストに掲げた55の政策のうち、厚労省の所管は20に達する。マニフェストを「国民からの命令書」と背広のポケットに入れて常に持ち歩く長妻。攻めに強い野党政治家から、現実とも折り合える与党政治家に脱皮できるか。苦闘の日々が続く。

=敬称略

 

 

6.4700公益法人、仕分けで全面見直しへ

2009122日読売新聞)

 政府は1日、各府省所管の公益法人を「事業仕分け」の手法で全面的に見直す方針を決めた。

 事務・事業を見直すことで、法人そのものを整理する狙いだ。そのうえで、これらの公益法人が官僚の天下り先となっているとの批判を踏まえ、補助金などを継続して受ける条件として、役員の公募制導入を義務づける方針だ。

 行政刷新会議は1130日の会合で、公益法人に対する国からの支出が、官僚OBの報酬の財源確保になっているという批判があることを受け、公益法人改革に来年から本格的に取り組む方針を確認した。

 仙谷行政刷新相は1日の閣議後の記者会見で公益法人を事業仕分けの手法で見直すことについて「(公益法人の)存在そのものを問うという観点から、どういうやり方で出来るか、早急に検討に入りたい」と述べた。行政刷新相によると、対象となる法人数は約4700に上り、準備が必要なため、実施時期は未定だという。