拙稿「資本主義は持続可能か?」に関するご質問への回答

東京都文京区 松井 孝司

 

道州制推進連盟の会合で柳田康雄さんから令和元年のこの時期に「資本主義は持続可能か?」の問題提起は何故かとのご質問をいただきましたので回答させていただきます。

 

 私の投稿は水野和夫氏、山口二郎氏共著の「資本主義と民主主義の終焉−平成の政治と経済を読み解く」(20195月刊、祥伝社新書)を読んだことが契機になりました。

 水野氏は三菱UFJ証券のチーフエコノミストを務め、「資本主義の終焉と歴史の危機」の著書があり、早くから資本主義の終焉を唱えておられます。山口氏は北海道大学教授として民主党政権を支えた人ですが「政権交代とは何だったのか」などの著書があります。お二人ともに現在、法政大学の教授を務めておられます。水野氏、山口氏のご見解については上記の著書をご参照ください。

 

 私も日本だけではなく世界の資本主義と民主主義が危機を迎えており、民主制にもとづく衆愚政治、ポピュリズム政治がつづくと世界の資本主義は持続困難になると考えていますが、水野氏、山口氏と私の見解は大きく異なります。

拙稿の「資本主義は持続可能か?」(メルマガ用修正版)では「民主制の欠陥が顕著に」「戦後日本の民主主義」「金融資本主義の変質」のサブタイトルで民主制と資本主義に対する私見をまとめていますので再読をお願いします。

 

私が注目するのは中国の驚異的な経済成長です。資本主義の持続には可処分所得を飛躍的に増大させ、高度経済成長を実現した中国の国家資本主義に学ぶべきことが多いのではないかと考えています。中国経済は日本の多くの経済学者が「新自由主義」「市場原理主義」として毛嫌いする米国シカゴ大学のミルトン・フリードマンの「小さな政府」「選択の自由」を説く経済政策の影響を受け、中国共産党の首脳部は「社会主義市場経済」を容認したため中国の国有企業は市場経済の競争原理に晒されるようになりました。中国の経済成長は地方政府間の競争の成果と見ることができます。米国流の個人の利益を優先する「金融資本主義」より中国の全体の利益を優先する「国家資本主義」の方が持続的な経済成長が可能となるため持続可能性は大きいと考えています。

 

 最後に民主制のもとで資本主義を持続可能とするための私見を「部分と全体の調和を!」のサブタイトルでまとめました。

 対立する存在を両者の相補的関係を構築することにより融合し、対立を解消する政策は仏教の思想に係る部分で多くの人にとって難解だろうと私自身も自認しています。

生活者通信第234号に掲載の「非の哲学について」と「21世紀の資本主義(2)−「反」ではなく「非」の哲学を!」と題する拙稿も併せてご参照いただければ幸甚です。