人権後進国・日本

生活者主権の会副代表 松井 孝司


オランダ人のウオルフレン氏は著書「人間を幸福にしない日本というシステム」の中で検察が起訴する裁判の99.8%が有罪になっていることを理由に、法の番人である司法は官僚の下僕であるとし、三権分立は名ばかりで官僚が主導する日本の民主主義に疑念を表明している。日本は法治国家ではなく官僚の裁量で統治される国家であるとの指摘である。

本号(28ページ)に掲載される清郷氏のご投稿によれば、「混合診療」を受ける権利確保のため「保険受給権は公的医療を受けることと同義で社会保障の根幹であり、これを奪われることは憲法に謳われた基本的人権を侵害する」として政府を相手に訴訟を起こされたが、今回最高裁判所で敗訴が確定した。

民間人による行政訴訟は殆どが敗訴する事実はウオルフレン氏の指摘を追認するものであり、清郷氏の裁判事例は「人間を幸福にしない人権後進国・日本」が今でも健在であることを再確認させてくれた。

TPP(環太平洋経済連携協定)に反対する人たちは、反対する理由として「混合診療」を挙げ「患者の財力による医療格差が広がる」というが、現行制度こそ財力のある人しか自由診療を受けることができず医療格差を温存しているのだ。混合診療は財力の無い人にも自由診療を受けることを許容するもので、政府や既得権益をもつ医療関係者ではなく生死の境で苦悩する患者の立場にたって検討すべき課題である。

日本経済の長期低迷も官僚による産業政策に起因することは間違いないだろう。規制による産業保護が国内産業を弱体化させ、円高を嫌う競争力が強い産業を海外に流出させ国内の雇用を減らしているのだ。

日本人は外圧を借りないと自らを変えることができないが、明治維新や第二次世界大戦後の目を見張る変化は外圧による変化への適応力が優れていることを歴史は教えている。

日本経済再生ために民間人や民間企業を規制する不当な法律や裁判制度の変更をTPP交渉の対象に含めることは歓迎すべきことである。

TPPは日本を変えるための外圧とらえ、日本を真の法治国家へ根底から改革するためのチャンスと考え、前向きに検討すべきだろう。