八ッ場ダム事業の現状と見通し

生活者通信への投稿の補足

埼玉県所沢市 河登 一郎

1. 「八ッ場ダム中止」が骨抜き?: 昨年9月新政権誕生直後に前原国交大臣が「八ッ場ダム建設中止」を宣言し、その後も中止の姿勢は堅持されていますが、実態は「骨抜き」にされつつあります。私は本事業についても(普天間ほど無責任ではないにせよ)新政権の実務能力の欠如を実感します。

2. 「総論」だけではダムは止まらない: 1967年に着工し、工事も経費支出も相当進行している大事業を中止するのですから、単に「中止する」と抽象的に宣言するだけでは不充分で、具体的な各論のツメが不可欠です。私たちは当初から、(1)安全上必要な工事を除いて全体を凍結し、(2)残った全事業は中止を前提として大幅に見直すべき、(3)見直し作業には公募委員や住民を含め、徹底した情報公開のもとで実行すること、を提言してきました。

3. 実質的には進行している?: しかし、国交大臣は、現地の県知事、町長、住民(の一部)および官僚の意見を尊重して、「ダム本体」以外の工事は「生活再建に必要」と位置づけて、ダムを中止すれば再建の支障になる工事まで承認。平成22年度の予算に関しては、@国はダム本体を除いた全額、A県はダム本体も含んだ金額を計上して工事は進行中です。

4. ダム本体だけの中止では意味がない: 八ッ場ダムの場合、周辺工事が非常に多いので、ダム本体の工事費は全体の9%弱に過ぎません。従ってダム本体だけの中止では実質的に中止したことにはなりませんし、逆に本体だけの「(追加)費用対効果」を考えれば完成すべきという主張に説得力が生じます。

5. 新政権は実力不足: 八ッ場ダムだけではありません。全国のダム事業に目を転じてみても同様な状況が多数見られます。これは八ッ場同様実務的なツメの能力欠如に加えて、従来から利権集団になっている党地方組織も多く、選挙対策として「公共事業ばら撒き」体質があるからでしょう。「道路予算箇所付け」騒動ではその体質が白日の下に晒されました。

6. 公取に対して談合の「措置請求」をします: 上記とは別の動きとして、私たち6都県の八ッ場ダムを止める会は、本事業の入札実績を詳細に分析した結果、談合の疑いが極めて高い実態を、5月末に公正取引委員会に対して「措置請求」します。       

  22・5・22