長妻昭氏の勇気に敬意を表する

東京都渋谷区 岡部 俊雄


 鳩山内閣が発足した。重厚で実践型の布陣である。

 鳩山総理以下多くの閣僚が一様に脱官僚依存を強調し、矢継ぎ早にマニフェストに書かれた政策の実行を明言した。政治の景色が変わり、霧が晴れたようで、爽快な気分である。

 その中でも、長妻昭氏の姿勢を高く評価したい。

 新聞報道によると、同氏は鳩山総理から行政刷新会議担当大臣への就任をオファーされたが、それを断り、「年金問題をやらせてほしい。副大臣でも結構ですから」と言ったそうである。結局大臣総数の制限もあってか、厚生労働大臣に就任した。この勇気は素晴らしい。

 長妻昭氏は野党時代に消えた年金問題を厳しく追及し、様々な提案をして、「ミスター年金」と呼ばれ、07年の参議院選挙や今回の総選挙を民主党勝利に導いた立役者の一人である。

 それが担当大臣になったら、野党になった自民党やマスコミから「今迄言ってきたことを全部実現しろ」と逆襲される可能性があり、また、「大臣として最も来てほしくない人」と言っていた厚生労働省の官僚からも、どのような抵抗があるかわからない。

 つまり、長妻昭氏にとって厚生労働大臣は非常にリスクの大きいポストなのである。それにもかかわらず、そのポストを自ら希望したという勇気のある行動に敬意を表したい。

 それほどに、年金問題の解決にほとばしるような情熱があったのだろう。

 そして、それらを全て承知の上で、長妻昭氏を厚生労働大臣に任命した鳩山総理の脱官僚依存遂行に対する思いの深さと、長妻昭氏に対する信頼の厚さには目を見張るものがある。

 長妻大臣の着任の風景をテレビで見たときには、かつての田中康夫長野県知事の着任の風景を思い出してしまった。

 迎えた官僚の冷たい、棘のある目線、引きつったような表情、一言も発せず、拍手も無い異様な風景の再現である。

 それでも長妻大臣は講堂に集まった官僚を前にして、何時もの口調で、何時もの表情で、明快に施政方針を述べ、官僚のとるべき行動指針を冷静に述べた。

 まことに見上げた信念の人物である。近来まれに見る政治家である。

 これから先、多くの困難が待ち構えていると思うが、同氏なら必ず乗り越え、目的を達成してくれるものと確信する。

 このような政治家像こそ、我々が待ち望んでいた政治家の姿である。