法的根拠示されず─次回被告が3度目の準備書面

〈裁判ドキュメント─3〉

神奈川県藤沢市 清郷 伸人


200774日午前11時半東京地裁606号法廷で第三回弁論が開かれた。裁判官が3名、原告側が1名、被告側が3名出席した。523日第二回弁論で定塚裁判長は、被告の準備書面(1)が混合診療禁止の法的根拠を示しておらず不十分なので、書き直すよう命じた。

 被告は提出期限の622日に間に合わず提出は27日になったが、私は届いたら本文だけファックスを送るよう地裁書記官に依頼していたので、被告代理人の東京法務局訟務部より書類を即日受領した。この代理人の部署に私は不審を持ったが、国が被告の訴訟では代理人弁護士を一手に引き受ける行政裁判弁護の優秀な専門家集団なのだろうと想像した。ということは弁護士までが厚生労働省と同じ官であり、やはり官である裁判所がいってみれば身内を公正に裁けるかは疑問が残るところである。

 私は提出された14頁(約1万字)の準備書面(2)を読んだ。健康保険制度のしくみと混合診療にまったく保険が給付されない長々とした説明の中で健康保険法63条や86条そしてその法に付随する療担規則18条、19条を法的根拠とし、その反対解釈として混合診療は禁止されているとしている。そして裁判長が前回法的根拠の審理に続いて法解釈の合理性を審理すると明言したことから、準備書面(2)はそれについても言及しているが、わずか2頁で「医療の平等を保障する必要があること」、「患者の負担が不当に増大するおそれがあること」、「医療の安全性・有効性を確保する必要があること」の3点に軽く触れているのみである。

 私はこれなら反論は3日で書けると思った。今まで十分に考え、苦しんだ問題だから全部頭に入っていていつでも出せる。この週末に書き上げ、7月4日の第3回弁論に提出しようと考えた。こうして私は約9千字の準備書面(1)を書き、提出した。

 冒頭、裁判長は被告側に向かい、条文の解釈論を述べてください、どの条文に基づき、混合診療になると給付が排除されると導き出せるのか、それによっては今日で結審にしますと述べた。被告側が述べたことは、概ね次の通り。健康保険は現物給付が原則で、保険診療の一部負担金以外の自由診療の現金徴収を病院がおこなうとその原則が崩れる。治療は単独でなく一貫しており、療担規則で大臣の定めた以外の治療を行うことは不適切と読める。その一連の治療という考えから、たとえ病院を変えても治療日をずらしても、同じ病気の治療という目的なら保険外治療の併用はすべて混合診療になり、保険給付は一切なくなる。以上は法63条、86条、療担規則18条、19条を根拠に、明文規定ではないが解釈可能としている。

 裁判長は、政策目的はわかったが国の政策の是非を論じているのではない、それは次の法解釈の合理性の審理で行う、根拠と合理性の二つを分けたのは審理の混乱を防ぐためである、指摘の混合診療でどの条文が影響して保険の現物給付を行うとした法63条がなくなるのか、たとえば加持祈祷は混合診療になるかの裁判長の質問に保留した返事も含めてもう一度書きますか?と述べた。

 ここで裁判長が原告はなにかいいたいことがありますかと訊ねたので、次のように答えた。被告の書面を読んでも発言を聞いても混合診療の法的根拠は理解できない。昨年最高裁が国民の権利を制限するには法律の根拠を要するという判断を示したが、明確な法律もなく反対解釈などというあいまいなものは根拠とはなりえない。そんな解釈で全国の病院、医者を縛り、患者を苦しめることは許されない。厚生労働省は同じ病気の治療目的なら月日や病院や医者を変えても混合診療になるといっているが、そんなことは誰もしていない、いくらでもヌケ道がある。国はそのように根拠のないことでこれほど重大な政策を実施しているのである。

 書面では十分に書くことができたが、口頭となるとダメである。素人の私はいいたいことの半分もいえない。裁判長は、原告の主張したいことは十分分かったといってくれたが。

 最後に裁判長は被告に書面は1カ月で書けますかと尋ねたが、しっかり書きたいので十分時間が欲しいということで提出期限は820日、次回弁論は829日となった。被告の国には専門の弁護士が何人もいて書面を書く時間も十分もらいながら、裁判長の法的根拠を示せという同じ質問に何故何度も書き直しを求められるのだろう。それは法的根拠など明確なものがもともとなくて、無理やりでっち上げるしかないからとしか私には思えない。また私はその時、裁判長が場合によってはそこで結審するといったことが気にかかる。混合診療禁止の法的根拠の審理で終わるのか、法解釈の合理性の審理はどうなるのか。そこを審理しないで結審することは私の本意ではない。それとも審理するまでもなく、原告の提出した書面と被告の提出した書面を吟味して、合理性の判断は裁判長の中で決まっているのか。だとすると私の勝訴以外は考えられないが、次回弁論で結審するなら裁判長にその訳を問うてみなければならない。

2007/7/4