自民党総裁選と憲法改正論議

リンカーン・フォーラム代表代行兼事務局長 内田 


自民党総裁選が本格化してきました。「自民党総裁=首相」ですから、自民党員でなくとも注目せずにはいられません。

ところで、総裁候補大本命の安倍晋三官房長官は、主要政策の筆頭に「憲法改正」を掲げています。

ぜひ、これを機に、国民が憲法に対して改憲だの護憲だのという枝葉末節の議論に踊らされるのではなく、

 「そもそも憲法とは何か?」

 「民主主義とは何か?」

 「日本国憲法は生きているのか?」

という本質論が巻き起こることを期待してやみません。

というのも、私は国民が憲法の本質を考えることこそ、政治参加への最も大事な第一歩だと考えるからです。

憲法の本質が分かれば、民主主義が生まれてきた背景や民主主義が成立する条件が分かります。

そして、

 ・日本には成熟した民主主義は存在しない

 ・なぜなら、民主主義の大前提には「契約(政治家なら公約)を守る」というルールがあるから

 ・政治家が公約を守らず、国民が公約破りに目くじらを立てないままでは、日本に民主主義が根付く可能性は極めて低い

という驚くべき事実に気付くはずです。

改憲も護憲も、偏りすぎると目が曇ります。なぜならば、本質的に大事なことは憲法条文の字面ではなく、それを遵守しようという国民の心構えの有無こそが、実際の政治を良くも悪くもするからです。

たとえば護憲派は、現行憲法の素晴らしさを謳いますが、自分たちがいかに現行憲法を無視し、踏みにじっているかという事実に気がついている方は稀です。

一方、改憲派も、国民に現行憲法の遵守精神が育っていない、あるいは育てようともしていない現状の下で、憲法の字面だけ変更しても本質的な問題は何も変わらないことに気付いていません。

今こそ、憲法を学びましょう。

民主主義を日本に根付かせるためは、国民が選挙公約を知り、それを政治家に守らせる風土を、不断の努力と教育で常に培っていかなければなりません。

私たちリンカーン・フォーラムは、そのための最も有効な手段として、選挙における公開討論会を推進しています。

《「J.I.メールニュース」No.2662006.9.15発行)より転載