生活者主権の会生活者通信2001年01月号/06頁..........作成:2001年01月02日/杉原健児


映画『17才』原案 (2)

ポリインフォ・プロダクション 秋沢秀人・宮本修伍・清郷伸人

【3.登場人物プロフィール】

○吉岡 誠   日本経済大学卒で総合商社丸和商事勤務のサラ   リーマン。47才。内気で目立たない性格。趣   味は読書とパソコン。 ○吉岡 冴子(旧姓西野)   港短大家政科卒の栄養士。45才。行動的な女   傑タイプ。 ○吉岡 秀一   有名私立高校2年生。17才。成績普通。学校   にも家庭にも不満はあるが抑えている。 ○水本 憲明   秀一の担任の教師。38才。秀一とソリが合わ   ず対立的になる。妻と高校1年の息子。 ○浅田 弘子   開業医の夫と有名私立高2年生の息子を持つ専   業主婦。43才。気難しい才女タイプ。

【4.シノプシス】

<丸和商事営業部> 吉岡誠が顔色悪く座っている。昼休み、皆食堂 へ行くので元気なく最後にひとりで行く。 <丸和商事食堂> 吉岡誠が食事の大半を残している。そこへ西野 冴子が通りかかり、誠に「貴方には食べやすい 特別食を用意します」という。 < 〃 > 別な日。食堂の特別席、冴子の用意した特別食 を食べる誠。元気になり、やってきた冴子に「 元気になったのでお礼がしたい」といってデー トの約束をする。 <1年後→ホテルの結婚式場> 誠と冴子の結婚式。 <賃貸マンション> 秀一の誕生。冴子は丸和商事を退社する。半年 後マイホーム取得のため秀一を保育所に預けて 食堂会社にパートで勤める。 <郊外の一戸建て> 新築のマイホーム。引っ越しの挨拶にブランド もののバスタオルを配る冴子。 開けてみてびっくりし、やがて暗い嫉妬の目付 きで家族と話す浅田弘子。幼稚園の入園式 保 母と仲良くしている秀一、母親たちと如才なく 話す冴子。それを睨んでいる弘子。 <弘子の家の前> 秀一を連れた冴子が弘子の息子や園児2、3人 のいる弘子の家の前を通り、皆に「秀一と仲良 く遊んでくださいね」といって買い物に行く。 弘子が出てきて「吉岡冴子は大嫌い」といって 秀一を残して皆を家の中に招き入れる。 <公園> 涙の乾いた顔をして秀一がしょんぼりしている ところへ冴子が通りかかる。訳をきき、悔し涙 で秀一の手を引いて帰る。 <町内会> 役員の弘子が町内会費と祭りの寄付金を集めに 冴子宅に。寄付金を仕方なく1000円出す冴 子に、どこも最低3000円だと迫る弘子。払 わされる。誠にいうと有力者だから逆らうなと。 <有名小入試前> 冴子は食堂会社から給料のいい料理栄養学校に 勤めている。誠はいつも10時過ぎの帰宅。冴子 と出来合いの惣菜の夕食をすますと秀一の入試 の特訓。ふたりとも誠とはほとんど顔を合わさ ないし、口もきかない。 <小学校入学式> 有名校入試に失敗した秀一はあまり祝ってもら えない。弘子の息子は合格したからなおさらで ある。誠は公立でもいいというが、冴子に無視 される。もう有名中学を目指すという話しが出 るくらい。 <小学校5年生> 学校と塾と自室でのゲームの毎日。それらは冴 子にきちんと管理されている。子供らしい外遊 びやケンカとは無縁の生活。ゲームは大好きで、 とくにファンタジーとバイオレンスはお気に入 り。また勉強は好きではないが、絵や漫画、デ ッサンは好きで本格的に教室に通いたいが、母 親は受験のため許可しないし、伸び伸び描かし てはくれない。一方、教室は3、4人の悪童に 荒らされている。先生は体罰もできず、逃げ腰。 注意した子が袋叩きにされる。冴子にいうと、 決してその子たちに逆らってはいけない。知ら ん顔をしてなさいといわれる。PTAでは悪童 の親より学校の責任ばかりが追及される。 <街で> 家族そろって久し振りの外出。路上でホームレ スを見て、少し恐怖を感じ、冴子に何故あの人 たちがいるのと尋ねると、あの人たちは人間の クズ、ああならないよう勉強していい学校に行 きなさいといわれる。夕刻の駅ホーム。老人男 性が柄の悪い若い男2人にカラまれている。な んでも所定場所以外の喫煙を老人が注意しての トラブルらしい。手は出さないが言葉の暴力が すさまじい。しかし周りのだれも困惑と恐怖に おののく老人を助けようとはしない。知らん顔 でやりすごす。秀一たちも同じ。ただ秀一はこ の光景に強い印象を抱く。 <有名中学合格> 猛勉強の甲斐あって合格。お祝いに家族でアメ リカ旅行。帰路の飛行機、誠と秀一は帽子から 靴までお揃いのジーンズ・ルック。冴子のアイ デアでみんなご機嫌である。 成田空港からの特急指定席。3人の席に老人が 座る。その途端、秀一の表情が一変する。老人 を殺人的な目付きで睨む。両親はしばらくして 気付いたはずだが、黙っている。老人はいたた まれずとうとう席を移る。 <友人の叔父の居酒屋> 開店前、友人と店でしゃべっているとチンピラ が親父を呼べと。友人の叔父に金を要求。威張 って受け取る。訳をきくと暴利の借金の取り立 て屋だと。やつらは半分の報酬を取ると。また 居酒屋の家主が購入したビルの占有屋も法外な 立ち退き料を要求していると。警察も腐ってい て何もせず、まじめに働く者が馬鹿を見ると。 そんな所から借りなければという友人に自分た ちのような者に銀行は貸してくれない、どうし てもとなったら分かっていても貸してくれる所 に行ってしまうと。 <中学校生活> 勉強があまり面白くない。絵は好きだが、家で は高校受験のことばかり。当然、塾にも通わさ れる。母親の管理は依然つづく。にもかかわら ず成績は少しずつ落ちていく。パソコン通信と バイオレンスのゲームにますますのめりこむ。 有名中なので表面は荒れていないが、要領のい い生徒は適当にうまく遊んでいる。秀一はそう ではないので喫煙がバレたり、エロ写真が見つ かったりして学校と親から強く叱られる。だが 普段はまじめなおとなしい生徒である。 <中学3年生> 学校から成績も内申点もこのままでは進学に問 題ありと連絡が来る。家庭教師をつけ、内申対 策ではボランティアをやることになる。家庭で はつねに成績と内申書のことが話題になる。 <高校入学・高校1年生> なんとか一貫で高校に進むことができた。成績 は中の下くらいまで回復。絵画部に入る。母親 はいい顔をしなかったが、無視。とてもウマの 合う美術の先生がいた。いろんなことを話し合 う。絵がますます好きになる。一方、歴史の教 師はなにかにつけて秀一に注意する。ヌレギヌ も多い。秀一はニヒルな眼で教師を睨む。 < 〃 > パソコンに開いた秀一のホームページを見た女 性からEメールでデートの誘い。ガールフレン ドもいないのでついOK。友達に話したらヤバ イといわれ、結局スッポかす。翌日、自分の携 帯に男から「慰謝料5万持ってこい」と。仕方 なく親に嘘をいって持っていく。そんなことが 2回つづき、携帯を手放す。しかもその話が教 室に広まり、女生徒から馬鹿にされる。 <父の帰宅> 父が顔にひどい怪我をして帰ってきた。会社の 株主総会を控え、配属先の総務部に数人の総会 屋がきてトラブルとなり、父が若い男に殴られ たという。しかし会社は総会屋に金を払ってい た過去もあり、警察沙汰にせず泣き寝入りさせ られたという。総会屋にはただ来るだけで毎年 父の会社だけでも数百万円支払っていたという。 <高校1年末> 美術教師退職。母親は絵では出世しないから辞 めろという。サバイバルナイフ購入。一つの心 の拠り所。 <高校2年生> 歴史の教師が担任になる。当番とか係りとかで なにかと不利になるように策していると秀一に は思えることがつづく。実はそれほどではない のだが、思い込んでいる秀一はすべてを悪くと らえる。このことは1、2の友人を除いてだれ にも話してない。 <教室> ある日、黒板を歴史の教師が引き上げると“侮 留多巣毒刃事件2000年X月Y日”と書いた 半紙大の紙が貼ってある。「だれがこれを貼っ たか」と3回聞くが返事はない。教師は全員へ の罰としてノート1ページに年表を作り今日中 に提出するよう命じる。 (この四角面の教師に似た子が1年生にいる) <教室> 別の日の1時限目。歴史の教師が黒板を引き上 げると教師の机の下の奥から1年生の子の生首 が転がり落ちる。黒板と釣糸で結び付けてあっ た。秀一は驚倒する教師をニヒルな眼で眺める。 <家庭裁判所> 秀一は心身耗弱と判定され、医療少年院に収容 される。そこでカウンセラーによるカウンセリ ングを受ける。自分をみつめ、いままでの人生 はすべて母親が描いたもので、自分を無理に合 わせていたことを知る。そしてそのことにだれ 一人気付かず破局に至ったことを知る。日本社 会が陥っている競争と暴力への麻痺をカウンセ ラーは痛感する。…これらはノートや日記に記 されて表現される。 <秀一の家庭> 誠も冴子も会社を辞め、自宅も売り払い、医療 少年院に近い町に引っ越す。人づきあいを避け、 秀一の償いに生きる。誠がそれらを決め、実行 していく。ふたりは初めて本当の親、本当の夫 婦になった気がする。 <教師の家庭> 教師夫婦は立ち直れない。とくに母親は心身を 害し、入院。中学1年の妹もショックが大きい。 将来にわたって強いトラウマになりそう。教師 は仕事をつづけるが、担任は解かれる。眼はう つろである。 (完)

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