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━━ 平成17年10月14日 Vol.22 ━━━━ 毎月1日・14日発行

ミサイル防衛システムを急げ
                  生活者主権の会 板橋 光紀

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 もし今子供に「北朝鮮からミサイルが飛んで来るの?」と訊ねら
れたら、私は「金正日に訊いてくれ」としか答えようがない。不親
切な答えしか出来ない自分がもどかしい。「ミサイル」を日本語に
訳すと「飛び道具」になる。数年前から短・中距離ミサイルの発射
実験が繰り返されて来たのは事実だから、北朝鮮が各種ミサイルを
保有していることと、場合によっては「飛んで来る可能性」だけは
あると認識せざるを得ない。

 かくなる上は日米共同開発によるミサイル防衛構想(MD)が推進
され、北朝鮮から飛んで来る「飛び道具を飛び道具で」確実に撃ち
落せる迎撃態勢が早期に構築されないことには枕を高くして眠れな
い。

 MD構想に並行して日本の「武器輸出三原則」の見直しが叫ばれる
ようになった。MDシステムの設計や製造そのものはアメリカ主導で
行われるに違いないが、システムに組み込まれる迎撃ミサイルと高
性能レーダーやコンピューターなどに採用される「日本製電子部
品」がアメリカへ輸出されることによって開発までの時間が短縮出
来ることから、共同開発はアメリカから日本に対して提案されて来
たものと考えられる。

 「ミサイル」は短距離用から長距離用まで、対空や対戦車、誘導
方式の違いなど、夥しい種類に分類されるが、全てのミサイル弾頭
の構造はおしなべて三つのセクションに分かれている。先端が測定、
誘導、制御の機能で、殆ど「電子部品」で成っている。真中が信管
や爆薬などの目標破壊機能。後方にエンジンやロケット燃料などの
機体推進を司る部材が位置」している。どこの国でも兵器の改良は
怠りなく、ミサイルの命中精度は年々高くなっていると思われるが、
精度を高めるカギは先端に位置する「電子部品群」にあることは言
をまたない。あらゆる部品の効能が常に新しい優れたものに差し替
えられる改良と、部品の小型化と軽量化が競われる。

 1978年、田中角栄がロッキード事件に問われた年、ソ連空軍
のベレンコ中尉がミグ25戦闘機を駆って、白昼堂々と函館空港へ
強行着陸、西側への亡命を求めて来たことがあった。当時の「ミグ
25」はソ連の誇る最新鋭戦闘機であったが、日米の軍関係者が機
体をよく調べてみると、戦闘機に搭載されたレーダーに「旧式の真
空管」が採用されていることが判った。宇宙開発ではアメリカを凌
いでいたと言われ、1961年にガガーリン少佐が有人宇宙飛行を
成功させたほどのソ連でも、レーダーの増幅に不可欠な「トランジ
スター」を量産出来なかったことと、ココム(対共産圏輸出管理機
構)の規制が正しく機能して、西側の先端技術がソ連へ流出するこ
とがなかったことを物語っている。

 エレクトロニクスは家電製品に限らず、医療機器から工作機械、
OA機器とかカメラやおもちゃにまで浸透している。日本や台湾のエ
レクトロニクス工場が盛んに大陸へ進出して、中国ではテレビや冷
蔵庫、エアコンなどの家電製品を始め、汎用部品と呼ばれる用途の
広い各種の電子部品までもを生産出来るようになった。しかし高度
な技術や設備を必要とする最先端の部品や「武器に転用可能な部
品」の生産は無理。集積回路など「クリティカルパーツ」と呼ばれ
る重要な部品の供給は引き続き日本、台湾、アメリカ、ドイツなど
に依存している。これらエレクトロニクス先進4ヶ国自身にしても
夫々が得意分野を持っており、不得意な分野を補い合い、互いに依
存し合っている面がある。たとえ技術的に先頭を走るアメリカと言
えども一国で全ての電子部品を賄えることはない。ましてや北朝鮮
がミサイルに搭載する多くの電子部品を生産出来る筈がなく、つま
り北朝鮮は何らかの方法で日本製を含めた「武器に転用可能な電子
部品」を密かに入手していることになる。

 何年も前から秋葉原の電気街で中国人とか朝鮮人やイスラム圏と
おぼしき人々が電子部品を買い漁っている話は聞いていた。日本の
素材メーカーや販売会社が香港へ拠点を構え、そこへ身元のよく判
らない人物が出入りしているなどの報道もあった。

 我々貿易に携わる者は輸出先仕向け国によって、又輸出品目によ
って国から厳しい規制を受けている。それは、

(1) ワッセナー アレンジメント(国際輸出管理機構に制約さ
れる)

1994年に使命を終えたココム(対共産圏輸出統制委員会)の規
制に代わって、1996年に発効したワッセナー協約だ。「危険視
される国」には軍事技術を強化するような製品や技術を輸出しない
条約であるが、条文には「危険視される国」を名指ししておらず、
「危険」の定義は加盟国に夫々判断が任されている。日本は「危険
視される国」を「要注意国」と言い換えており、経産省の「要輸出
許可取得義務」の範囲は他の加盟国より少し広い。

(2) キャッチオール規制(軍事関連品目の輸出管理を義務ずけ
ている)

輸出品の用途や需要者名から見て、大量破壊兵器の開発に用いる恐
れのある品目を輸出する場合、経産省の審査と許可を受ける必要が
ある。規制品目は核兵器、化学兵器、生物兵器、ミサイル関連技術
及び部品である。

これら二つの規制によって「兵器に転用可能な電子部品」が日本か
ら「要注意国」へ直接輸出されることは(理論的には)ない。

 香港は1997年にイギリスから中国へ返還され、「一国二制
度」で運営されていることは衆知の通りであるが、昔ながらに「何
でもあり」の自由港であることに変わりはない。「税関」と名の付
く役所は存在するものの、たばこと麻薬と銃砲の輸出入には厳しい
規制をかけているが、その他の品目については統計をとるだけの目
的で、輸出入行為の当事者に取引明細の事後報告義務を課している
だけだ。

 20年ほど前に、香港経由の三角貿易によって先進諸国の先端技
術が紛争当事国へ流出する問題が指摘され、日本から香港への電子
部品輸出にも(ある程度)規制がかけられるようになった。しかし、
一旦荷物が香港へ荷揚げされた後は無秩序状態で、その先どこで、
何に使われようと規制は無きに等しい。大半は中国のエレクトロニ
クス工場へ届けられるものと信じたいが、一部が「要注意国」から
香港へ買い付けに来るバイヤーの手に渡る可能性は否定出来ない。

 更に問題が大きいと思われる点は、中国に存在する数万軒と言わ
れる各種エレクトロニクス工場の多くが、余った電子部品をたび重
ねて放出していることにある。部品の在庫管理が厳しい日系企業に
は少ないと思われるが、香港資本、台湾資本、アメリカ資本の工場
に部品の放出行為が多いと聞く。

 中国に限らないだろうが、エレクトロニクス工場が電気製品を、
例えば10000台生産する場合、重要な部材の殆どを日本、台湾、
アメリカなどから取り寄せることになるが、その際3%程度の数量
を上乗せした10300台分を調達するのが普通だ。この余分な3
00台分の部材を「スクラップ アローワンス」と呼び、不良品を
出してしまった時のリカバリーに備える。馴れない初回の生産にい
くらかの失敗作が出て、「スクラップ アローワンス」の一部又は
全部を使ったとしても、二回目、三回目の生産になると工員は作業
に馴れて来て、大量の不良品は出さないから「スクラップ アロー
ワンス」は殆どそっくり残り、どの工場も先々の生産や新製品の試
作材料用に保存しておく。これが何ヶ月、何年も経つと不要な部材
の在庫は夥しい種類と分量になり、それらの管理や保管スぺースの
確保に苦慮する。

 カバンに「現金」を詰めた部品ブローカーが度々工場を訪れ、余
剰な部品を即金で買い上げてくれる。「スクラップ アローワン
ス」は往々にして工場幹部職員の「裏金作り」に供される。部品ブ
ローカーは人民解放軍・ミサイル部隊の退役軍人、又はその意を受
けた代理人である場合が多く、中にはかなり専門知識を備えた人物
も散見できる。ブローカーが持ち去った電子部品が平和利用なのか、
ミサイルの製造に使われるのか、中国国内で消費されるのか、又は
北朝鮮やイスラム圏へ転売されるのかを私は知らない。

 しかし、どこの国のミサイルでも不発弾を分解してみると必ず日
本製の電子部品が搭載されている現実を見るに、我々が使っている
電化製品が更に日進月歩して、日々の生活が快適になればなるほど、
他所から飛んで来るかもしれないミサイルの命中精度も高くなって
来ることだけは覚悟しなければならない。

「著者・板橋光紀氏関連のHP」
http://homepage3.nifty.com/ne/ne/it/


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ー「創刊号」 2005年01月01日発行/2005年05月01日現在読者数:1342名ー

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