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━━━生活者通信メルマガ版━━━ 令和3年3月11日 Vol.151 ━

新型コロナウイルスのリスクについて

                  生活者主権の会 松井 孝司

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PCR検査よりウイルス感染重症化の早期診断を!

 予期されたことではあるが地球上で人口密度の高い北半球の寒冷
化で変異する新型コロナウイルスの冬季の感染再拡大がみられる。
空気が乾燥しウイルス分子が安定化する冬場にはウイルスの感染力
が高まり、低温で人体の免疫力も低下するので例年インフルエンザ
で見られるようにウイルス感染拡大のリスクが高まる。

 2021年1月8日から2月7日まで首都圏の1都3県に、1月
13日には栃木、関西圏、中部圏、福岡の7府県を加えて再度緊急
事態宣言が発令され、首都圏の1都3県では期間がさらに1か月延
長されて3月7日に終了予定であったが3月21日まで延長される
ことになった。感染のリバウンドを阻止するための期間延長とされ
るが延長しても変異するウイルスの感染再拡大のリスクが無くなる
ことはないだろう。
 コロナウイルス陽性者数は1月初旬にピークを示した後、激減し
ており日本国内の感染は宣言を発令する前にすでにピークアウトし
ていた可能性がある。なぜ宣言前の緩い規制でピークアウトが始ま
ったのか?その理由は人々の行動自粛ではなく、PCR検査の増幅回
数(Ct値)の変更、または土着コロナウイルスに対する交差免疫の
ウイルス再感染によるブースター効果である可能性が大きい。エビ
デンスにもとづく政策決定をするためにPCR検査と並行してウイル
スの遺伝子変異と感染による抗原、抗体(特にIgG抗体)の変動に
加え、免疫記憶を担うT細胞の機能変化(T細胞で発現するたんぱく
の変化)も追求すべきであった。

 2020年12月27日、羽田雄一郎参議院議員が新型コロナウ
イルス感染症(COVID-19)で急逝された。COVID-19の最大のリスク
は新型コロナウイルスの感染よりウイルス感染の重症化である。
 PCR検査が早ければ助かったとする意見もあるが、PCR(ポリメラ
ーゼ連鎖反応)は微量の遺伝子を増幅するための手段であり、ウイ
ルス感染の病状を診断する検査ではない。コロナウイルスの伝播状
況を調べる疫学的研究には有効な手段であるがCOVID-19治療には無
力な検査方法である。
 COVID-19の致死率を下げるためにはPCR検査ではなくパルスオキ
シメーターによる血中酸素飽和度の測定とCT(コンピューター・ト
モグラフィー)による胸部画像診断による感染重症化の早期診断を
徹底すべきだ。
 コロナウイルス感染の重症化には感染初期のインターフェロン応
答の年齢差や男女差が関わっている可能性が高く免疫反応の個人差
に依存することが判明している。インターフェロンはウイルス感染
で発現する抗ウイルス作用、免疫増強作用をもつたんぱくであり、
コロナウイルスの増殖を抑制するが人体への感染受容体になるACE2
(アンジオテンシン変換酵素2)の発現も増加させるという。

 感染重症化でみられるサイトカインストームによる免疫暴走はイ
ンフルエンザなど他のウイルス性呼吸器疾患でも見られる病態であ
り、血管炎症にもとづく呼吸不全や血栓症対策は経験豊富な臨床医
には対症療法が可能な免疫疾患である。
 COVID-19の診断と治療については新型コロナウイルス感染症COVI
D-19診療の手引き(第4版)に詳細が記載されているが、治療薬に
関してはレムデシビル、デキサメタゾン、トリシズマブ(商品名ア
クテムラ)、ファビピラビル(商品名アビガン)の用法、用量が掲
載されるのみで治療の目的を達成するには不十分である。世界の各
地で実施されている治験のデータを収集、検証し、有効性が確認さ
れた治療薬の早期収載を期待したい。

 上久保靖彦京都大学教授によれば日本では2019年にインフル
エンザとコロナウイルスS型の同時流行があり、2020年1月に
はK型が流行したため武漢G型にもT細胞による免疫記憶が成立して
おり「日本ではすでに集団免疫が達成できている」とする興味深い
仮説を提出された。(上久保靖彦、小川栄太郎対談「ここまでわか
った新型コロナ」WAC BUNKO参照)
 宮坂昌之大阪大学教授は近著の「新型コロナ、7つの謎」(講談
社ブルーバックス)で集団免疫説を前提となっているインフルエン
ザウイルスと新型コロナウイルスの「ウイルス干渉」には時期の推
定に無理があるとして否定されている。
 上久保靖彦教授の集団免疫説はウイルス干渉を前提にした仮説で
あり、ウイルス干渉の真偽を検証しなければならない。注目すべき
はウイルス分子が安定化する冬場になってコロナウイルス陽性者が
激増したにもかかわらず、インフルエンザの感染は激減し死者も減
少して日本国民の超過死亡者数が前年に比しマイナスになったこと
である。
 冬季になってCOVID-19の感染が拡大するのにインフルエンザの感
染が激減する現象は南半球でも観察された事実であり、ウイルス干
渉は普遍的な現象とみてよいと思われる。


Withコロナ時代のライフスタイル−自然との共生−

 なぜウイルス干渉のような現象が生ずるのだろうか?インフルエ
ンザウイルスとコロナウイルスは人体への感染受容体が異なるため
競合関係にあることを立証するのは疫学的なデータだけである。
 ウイルスを生物とみなすことができればウイルス干渉は細菌類の
菌交代現象に似ており、ウイルスの変異と人間社会の環境変化の結
果と見做すことができる。
 ウイルスの相互作用を考察するには生物と環境との相互作用を研
究対象とする生態学的考察が有用と思われる。

 ウイルスにとって宿主は人体であり、人体がウイルスの環境にな
る。コロナウイルスはRNA(リボ核酸)とたんぱく、膜脂質で構成
される分子の集合体である。人体もウイルスと同様分子の集合体で
あり、自然界では分子の離合集散を繰り返しながら遺伝子変異によ
る分子進化をつづけてきた。コロナウイルスの変異が早いのはウイ
ルスRNAが一本鎖のためコピーミスによる変異が起りやすいからで
ある。分子進化の過程で人体には変異したウイルス遺伝子が大量に
潜り込んでいると推定される。

 ダーウインの進化論によれば地球上に現存する分子はウイルスも
人体も自然淘汰により選別された結果であり、環境に適した分子の
集合体のみが生き残ってきたと考えられる。
 自然淘汰で生き残ることができるのはウイルスと人体の間に相互
依存性(相補的関係)が成立している場合であり、ウイルスの人体
への感染も分子の立体構造がカギと鍵穴に例えられる相補的構造を
持つ場合に限られる。
 ウイルス干渉はこの分子間相互作用に自然淘汰が働いた結果と推
定され、人体への感染に成功し人体と共生できるウイルスのみが生
き残ることになる。

 人体へのウイルス感染には分子の立体構造が重要であり、アルコ
ール消毒が感染を抑えるのはアルコールがウイルスの脂質膜を溶か
し立体構造を崩すからである。
 人体内の免疫反応でウイルスの抗原たんぱくと人体の抗体たんぱ
くが結合する場合も立体構造が重要であり、抗体に善玉と悪玉が存
在するのはたんぱく分子の構造と結合力に相異があるためと推定さ
れる。
 抗体の結合力が弱いとウイルス感染の防御に役立たずウイルスの
立体構造を温存することになり抗体が自己免疫反応やADEの原因に
なる可能性もあり変異し易いRNAウイルスに対するワクチン開発を
難しくしている。
 人体のコロナウイルスに対する免疫反応には今なお不明なことが
多く感染のリスク解消には人体の免疫応答に期待するワクチンだけ
に頼らずウイルス分子の増殖を抑制する抗ウイルス薬の開発も急ぐ
べきだ。

 インフルエンザには予防と治療のためのワクチンと抗ウイルス薬
が存在するのに毎年冬季になると決まったように流行が繰り返され
感染を止めることはできていない。インフルエンザウイルスの繁殖
に適した人体という環境が存在するからである。
 インフルエンザウイルスよりコロナウイルスが環境に適していれ
ばコロナウイルス感染が今後インフルエンザにとって代わる可能性
がある。

 インフルエンザやCOVID-19の感染がパンデミックとなるのは人間
の都市への集中がウイルス繁殖に絶好の環境を提供するからであり、
過密な人間集団の環境が存在する限りウイルスは遺伝子変異を繰り
返しながら何年でも生き残る。
 生物は遺伝子を運ぶための生存機械であることを主張するリチャ
ード・ドーキンスの見解に従えば利己的遺伝子に支配される生物世
界の中で人類はミーム(文化・知識)という新たな自己複製子を集
積してウイルスとの戦いに挑むことになる。

 欧米の事例でみられるようにロックダウン(都市封鎖)を繰り返
してもウイルス感染のリスクはゼロにはならず、ウイルスが変異す
るたびに感染再拡大は繰り返されるだろう。
 新型コロナウイルスの感染拡大で東京への一極集中の流れが変わ
り東京からの転出が増えていることは歓迎すべきことである。
 パンデミックを阻止するには過疎地への人口流出を促進し、居住
区の人口密度を下げる政策が重要になる。ライフスタイルを変更し
てテレワーク、オンライン会議、遠隔診療、遠隔教育などデジタル
技術で作業効率を向上させ同時に体力を落とさないように健康を維
持する環境も欠かせない。
 日本では秋田、鳥取、島根県のような過疎地域のCOVID-19による
死者は年間10人以下で致死率も低い。致死率が低いのは低人口密
度以外に生活習慣と人体の免疫力や食環境による遺伝子発現の相異
など多くの環境要因が考えられる。
 人体の遺伝子を取り換えることは容易ではないが人間社会の環境
は変えることができる。
 太陽光や森林浴が自然免疫を増強することが知られており、普遍
的な自然の摂理に合致した「自然との共生」がWithコロナ時代のラ
イフスタイルになるのではないか?

「著者・松井孝司氏関連のHP」
「市民が創る日本再生のシナリオ」
http://www2u.biglobe.ne.jp/~shimin/saisei/
「21世紀のライフスタイルを考える会」
http://www.jstyle21.net/
http://www.seikatsusha.org/ne/ma/


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(マガジンID:0000146184)

−「創刊号」 2005年01月01日発行−
≪2005年05月01日現在読者数:1342名≫


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