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━━━生活者通信メルマガ版━━━━平成26年4月1日 Vol.119━

放射線の風評被害を払拭せよ!

                  生活者主権の会 松井 孝司

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 福島第一原発は事故後3年が経過しても事故終息への見通しが立
っていない。原発事故の終息を難しくしているのは日本国内にまん
延する放射線恐怖症である。メディアが煽る放射線への恐怖が拡大
させた風評被害は東京オリンピックが開催される2020年までに根絶
しなければならないが、放射線の正しい知識を国民に周知徹底でき
れば風評被害を解消することは可能だ。

 20世紀の初頭に遺伝学者ハーマン・J・マラーはショウジョウバ
エの精子細胞の実験から放射線による遺伝子損傷は修復されないこ
とを発見してノーベル医学生理学賞を受賞したが、放射線は少量で
も生物にとって危険とするLNT(直線しきい値無し)仮説の論拠に
は訂正が必要となる論文が続出している。
                Radiology,25,13-22(2009)参照

 最近、ショウジョウバエの個体レベルでの実験で低線量の放射線
が自然免疫を誘導することが報告された。
             J.Radiat.Res.,53,242-249(2012)参照

 宇宙から降り注ぐ放射線に抵抗力を持たない生物は地球上で絶滅
した筈なのに何故ショウジョウバエが今日まで生き延びることがで
きたのか疑問であったが、その疑問が解消したのだ。

 精子と個体レベルでは放射線の影響に相違があることは合理的で
ある。精子(=細胞レベル)で異常があればその細胞を死滅させ除
去することが重要であるが、個体レベルでは免疫を誘導し異常細胞
だけを除去すれば個体の生存が可能になる。

 自然免疫を誘導する分子メカニズムも明らかにされた。0.2グレ
イ(Gy)のガンマー放射線をショウジョウバエ成虫に照射すると抗菌
作用をもつ蛋白分子Dorosomycinの発現誘導とp38MAPキナーゼなど
のリン酸化酵素が活性化され細菌感染に抵抗力を増すという。

 自然免疫を誘導する細胞レベルのメカニズムも解明され、抗原提
示機能をもつ樹状細胞の免疫能が低線量放射線により変化すること
が報告されている。樹状細胞を0.05Gyの放射線を放出するセシウム
137と共存させるとT細胞を増殖させ、ヘルパーT細胞をTh1優位に
シフトさせるようだ。     J.Radiat.Res.,48,51-55(2007)参照

 これらの報告は低線量の放射線照射が生物個体の細菌に対する感
染防御力を増強することを明らかにするもので、ホルミシス
(Hormesis)と呼ばれる有益な効果を分子、細胞、個体レベルで論証
するものである。疾患の治療に試みられる微小電流刺激もp53、p38
などの蛋白分子を活性化し、低線量放射線と同様の効果を示すこと
が注目される。        J.Biol.Chem.,288,16117-16126(2013)参照

 p38と呼ばれる蛋白分子は様々の環境ストレスに適応応答する酵
素で免疫応答や炎症の制御に中心的な役割を果たしており、ストレ
スで傷害を蒙った細胞に対してアポトーシス(細胞死)を誘導する。

 高線量では有害な放射線照射が低線量ではp53を活性化して癌を
抑制し、グルタチオンや酸化還元酵素SODを増加させて老化を促進
する活性酸素を消去するなど生物の適応能力を論証する研究報告は
膨大な数に上る。論文は多くても人体に対するデータが少ないため
にエビデンス(証拠)不十分とされ放射線汚染地域での風評被害を
解消できないことが問題だ。

 既存の論文から類推すれば放射線量には安全な閾値が存在し、年
間100ミリシーベルト(mSv)程度の低線量なら放射線を恐れる必要
はなく、むしろ放射線汚染地での居住が健康増進に役立つことも予
測される。今求められるのは動物で得られた研究成果を実証する人
に対する臨床データであり、放射線汚染地における疫学データであ
る。その目的を達成するためにも放射線量の規制基準1〜20mSvは見
直し、過剰な放射線は浴びないよう条件をつけ希望する人には放射
線汚染地域での居住を許可すべきだろう。

 福島第一原発周辺の放射線汚染地から長期にわたり強制的に避難
させられた多くの住民は必要がない避難生活を強いられたのではな
いか?根拠が乏しい風評が不安、精神的ストレスの原因となり疾患
のリスクを増大させる弊害を重視すべきだ。風評被害は最新の研究
に無知な学者、メディアと政治家が日本に招き寄せた災難でもある。

 厚生労働省の発表によれば2011年3〜4月に福島第一原発事故の
緊急作業に従事した作業員6245人の放射線内部被爆を精査した結果、
被爆線量が100mSvを超えた事例があるとしている。危険な緊急作業
に従事した人たちの健康管理を無料で実施しフォローを続ければ貴
重な疫学データを提供してくれるだろう。

 東京電力は除去が困難なトリチウムを含む汚染水を海に放出する
ことができず巨大な1000基ものタンクに貯めつづけている。このタ
ンクを際限なく増やすことはできない。最終的にはトリチウム汚染
水は希釈して海に流すことになるだろう。そのためにも正しい知識
で放射線の風評被害を払拭しなければならない。

 我が国の放射線医学の先覚者近藤宗平阪大名誉教授はマウスに
1日0.2mGyのトリチウム入り飲料水を一生涯飲ませ健康に影響が
無いことを実証されている。人体に当てはめれば毎時8〜10μSvの
ベータ放射線を浴びても健康に悪影響がないことが予測される。

 臨床データで低線量放射線の安全性を証明しなければ、いつまで
たっても原発事故を終息させることはできない。トリチウムが放出
するベータ放射線の安全な閾値の存在を証明できれば原発廃炉作業
の作業効率向上と安全管理にも大きく貢献するだろう。

 放射線は空間を飛ぶエネルギーでありアインシュタインの相対性
理論にもとづけば物質でもある。物質を構成する原子が崩壊または
融合するとき質量が減少する分がエネルギーとなって放出される。
放出されるエネルギーには赤外線(熱)、可視光線(電磁波)、ア
ルファー粒子線(陽子)、ベータ粒子線(電子)、ガンマー放射線
(電磁波)があり、最新の理論にもとづけばヒッグス粒子(ヒッグ
ス場)の影響を受けないエネルギーが電磁波である。励起状態にあ
る原子が安定状態に戻る時のエネルギー差が波長の異なる電磁波と
なって放出される。

 波長が長い程エネルギー量は少なく、波長が長い赤外線は人体を
構成する分子に吸収され健康維持に役立っているが多量の赤外線を
浴びれば即死する。波長が短いX線やガンマー線はエネルギーが大
きいため透過力が強く大部分が人体を通過するがDNA遺伝子に衝突
するとDNAを損傷し発癌の原因になる。生物の進化の歴史は宇宙か
ら届く放射線と地球内部で生成する放射線の危険性を克服しながら
適応する過程でもあったのだ。

 放射線エネルギーの本質を正しく理解できる人はいまだ少ないが、
いつの日か人類が放射線の遮蔽、制御技術を確立し、放射性廃棄物
を含め処理に困る放射性物質を多様な用途をもつ有益な資源として
活用できる日が来ることを期待したい。


「著者・松井孝司氏関連のHP」
「市民が創る日本再生のシナリオ」
http://www2u.biglobe.ne.jp/~shimin/saisei/
「21世紀のライフスタイルを考える会」
http://www.jstyle21.net/
http://www.seikatsusha.org/ne/ma/


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(マガジンID:0000146184)

−「創刊号」 2005年01月01日発行−
≪2005年05月01日現在読者数:1342名≫


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