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━━━生活者通信メルマガ版━━━━平成26年1月1日 Vol.117━

1ミリシーベルトの呪縛を乗り越えて(福島復興の最大の妨げ)

                       生活者主権の会  峯木 貴

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1)人災により被害が拡大した

 東日本大震災により引き起こされた福島の原発事故は、自然災害
よりむしろ人災により被害が甚大になってしまったことが最大の特
徴です。

 人災といったのは、言うまでもなく事故当時の「政治」の責任、
という意味が含まれています。

 今となっては、官僚組織や専門家を十分に使いこせなかった残念
な対策がたくさんあり、それが被害の拡大を助長してしまったよう
です。

 ちなみに、1986年に旧ソ連邦で原発の大事故を起こしたチェルノ
ブイリでは事故後わずか1年8ヶ月で2万4000人が住める夢のニュ
ータウン・スラブチッチ(Slavutich)を完成させたそうです。

 もしも、事故対策を官僚組織や原子力の専門家とともに的確に行
っていれば、これほどの被害はなかったような気がしますし、速や
かに収束したでしょう。


2)1mSv(シーベルト)の呪縛

 ところで、未だに福島県民を苦しめている元凶は、「放射性物質」
のそのものではなく、「1mSv/年という基準値」だと思います。
(この1mSvはレントゲン(0.6mSv)を2回受けるとオーバーしてし
 まう値)

 この基準は事故後の混乱のさなか、民主党政権がやみくもに設定
してしまったものです。というより当初20mSvという暫定値を設けた
のですが、一部の反対意見に押されて1mSvにしてしまったのかもし
れません。

 仮にIAEAが示すような暫定値20mSv/年を基準値としてしばらくの
あいだ維持していれば、福島県民のほとんどは避難をする必要がな
く、避難所で無駄な死をとげる人はいなかったはずです。20mSv/年
を超える箇所は福島第一原発の正門ぐらいだといわれています。

 いきなり厳しい基準を設けるのではなく、暫定基準をさだめ、そ
の後、復興の状況を見ながら徐々に厳しくしていけばよかったので
す。


3)基準値1mSvのパラドクス

 一般的に「環境基準値」というものは、国民の健康を守るために
定められるものです。しかし、避難所で不慮の死を遂げてしまった
人のことを考えると、この1mSvという基準値は、逆に国民の健康を
むしばむ結果となってしまったようです。

 震災から半年もたってから亡くなる方は、岩手県、宮城県、福島
県の3県で見ると、その9割近くが福島県で発生しているという復
興庁のデータがあります。

 つまり、岩手県、宮城県では事故直後になくなる方が多く(当た
り前ですが)、それに比べ福島県では事故後長い時間をかけて亡く
なる方が多いという嘆かわしい結果になりました。これは、ひとえ
に1mSvという基準値のため、元に家に帰れないために起きているの
です。

 日本人の場合年間2.1mSvの放射線を自然環境から浴びており、フ
ランスやスペインでは年間5mSv、フィンランドでは年間7mSvを超え、
欧州では多くの国で生涯線量は300〜600mSvにもなります。それから
類推すれば1mSvの線量規制は根拠が乏しいと考えられます。

 放射線の影響が1mSvになるまで除染するには5兆円以上の巨額の
費用が必要と試算されています。巨額の経費を除染に使わずに新し
い街づくり使っておれば多くの住民の避難生活をとっくに終息させ
ていたことでしょう。


4)すべては教育の問題

 以上のことは、少しでも放射線のことを学べば、おかしな話だと
いうことに気づくと思います。

 地球上の生命は放射線とともに進化してきました。

 太古の地球では放射線は非常に強いものでしたが、最近になって
生物が陸上で棲める状況となりました。それまでの長い期間で生命
は、遺伝的に放射線を防御する機能を獲得しています。

 最新の研究は多くの生物が放射線に抵抗力を持つことと遺伝子の
損傷と修復の詳細なメカニズムを明らかにしています。

 そう考えると、逆に、放射線0mSvでは生命体は生きていくことが
できないかもしれません。

 ただし、現在脱原発派の考えているLNT理論では放射線は0mSv
が望ましい状況と考えられています。これはショウジョウバエを使
った古い実験※で、特定の条件のみで成立するものを拡大解釈して
いるので、いずれ早い時期にそれに代わるものが出てくると思われ
ます。

(※20世紀の初頭に遺伝学者ハーマン・J・マラーは、ショウジョ
 ウバエの精子細胞の実験から放射線の影響は少量でも蓄積し修復
 されないことを発見し1946年にノーベル医学生理学賞を受賞しま
 したが、その論文の影響が今なお健在です。)

 このような基本的な教育も、原子力の安全神話とともにないがし
ろにされてきました。


5)今後のエネルギー政策

 一度崩れた安全神話はもとに戻すことは困難です。

 一部の再稼働は可能でしょうが、これから新たな原発を作ること
は不可能に近いかもしれません。

 しかし、エネルギーの需要は待ったなしのものです。

 となると、日本は次世代の核エネルギーの利用(核融合)に進ま
ざるを得ないと考えられます。

 現在の原発は、放射性廃棄物の発生、メルトダウン…というよう
な危険性があります。核融合はそれらを克服した夢のエネルギーと
いわれています。しかし、開発までまだまだ時間がかかりそうで、
その間のつなぎとして、今の原子力、火力などは必要だと思います。

「著者・峯木貴氏関連のHP」
http://www.seikatsusha.org/ne/mineki/


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(マガジンID:0000146184)

−「創刊号」 2005年01月01日発行−
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