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━━━生活者通信メルマガ版━━━━平成25年9月1日 Vol.115━

異次元の経済成長を!−民主党政権の失敗に学ぶ−

                      生活者主権の会  松井 孝司

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日本の経済成長は幻想か?

 民主党政権で官房長官、経済産業相を歴任した枝野幸男氏は「脱
近代化」を提唱し、経済成長期の政治の役割は「富の再分配」だっ
たが、低成長の時代に入った日本はコストやリスクを公平に分担す
る「負の再分配」の時代に入ったとして「成長幻想や改革幻想とい
った夢から覚めて、その現実に向き合わなければならない」と主張
したが、このような認識では民主党への期待を失うのも当然だ。民
主党政権はマニフェストで公約した公務員制度「改革」を実施せず、
マニフェストに無かった消費税を増税する「負の分配」政策で国民
の信頼を失ったのだ。

 民主党は2030年代までに原発をゼロにする「脱原発」政策を推進
しようとしたが、原発ゼロで最も喜ぶのは日本の弱体化を歓迎する
中国と韓国だろう。原発をゼロにすれば化石燃料の輸入増加で年間
3兆円以上の富が海外に流出するだけではなく、太陽光発電など効
率が悪い再生可能エネルギーの拡大のためには約100兆円の巨額
の資金を必要とし、コスト高で国民総生産(GDP)は50兆円近
く落ち込み、失業者は200万人増加するという試算もある。

 1000兆円を超える巨額の債務を抱えながら年間約1兆円の社
会保障関係費が増大する日本の財政健全化にはアベノミクスが目標
とする名目GDP3%の経済成長では不十分であり4%以上の異次
元の経済成長でGDPを倍増させなければ財政の健全化は難しい。
安価なエネルギー資源が乏しい日本が4%以上の経済成長を実現す
るには付加価値の大きい原子力エネルギーを活用する以外に選択肢
はなく「脱原発」を推進すれば日本の経済成長と財政健全化は幻想
で終わるだろう。

 先の総選挙と参議院選でアベノミクスを批判し「脱原発」を唱え
た政党が伸び悩んだことは日本にとって幸いであった。デフレ脱却
を目指すアベノミクスの延長線上にしか日本再生の道は残されてい
ないと思われるからである。国会議員が激減した民主党にとっても
組織再編と優秀な人材を公募するチャンスになるかもしれない。民
主党の再生には幹部を総入れ替えする解党的出直しとアベノミクス
に勝る経済成長戦略が必要であり、自治労、日教組に依存しない組
織への再編と先見力と問題解決力を兼ね備えたキャリア官僚OBの
取り込みを勧めたい。

 日本の人口減少も海外から人材を受け入れるチャンスである。シ
ンガポールの移民政策を参考にして人材受け入れのための法制度を
確立すべきだ。日本が4%以上の経済成長を実現するためには人口
減少を放置せず新しい制度と付加価値が大きい新技術を積極的に採
用して低成長から脱却しなければならない。高コストの旧制度・旧
技術を創造的に破壊し、新制度・新技術のリスクを取る勇気とリス
クを回避する知力が求められるのだ。


高付加価値の新制度・新技術を!

 本年5月24日に「マイナンバー制度」の関連法が成立し、2016年
1月から運用が開始されることになった。「国民総背番号制」など
と呼んで反対する人もいるが、戸籍・住民登録・印鑑登録(個人証
明)の制度をマイナンバー制度に置き換え電子政府、電子自治体を
実現すれば行政コストの大幅な削減が可能になる。法律で決められ
た定型業務はコンピュータに任せた方が正確で処理も早い。リスク
を恐れ「問題を起こさない」ことを優先させて複雑なシステムを創
り民間での利用を規制していては駄目である。マイナンバーの利用
範囲を広げるために多少のリスクは許容して個人の利益を優先し個
人の自立を促進する制度とすることが肝要だ。

 マイナンバーを電子カルテに利用できれば重複検査を省くなど患
者個人の利益になるだけではなく医療保険利用の実態把握が容易に
なり診療データを蓄積すれば診療ガイドライン作成のための貴重な
データを提供し医療の質的向上が期待できる。日本に長期滞在する
外国人にも適用し証券口座、銀行口座に使用を義務付け所得税の源
泉徴収と累進課税をすれば税収の改善に大きく寄与するだろう。
「個人情報流出のリスク」を煽る政党やマスメディアは無視して付
加価値を生まない行政コストは極限まで減らし、課税制度も簡素化
して税金が少なくて済む小さな政府実現の必要性を国民に辛抱強く
説得すべきだ。

 福島第一原発の事故で風評被害が拡大したのは民主党菅内閣の事
故対策の拙さと低線量放射線のリスクを正しく伝えず国民の放射線
に対する恐怖心を増幅させたマスメディアの無責任な報道によるも
のであるが、原発の停止が電力会社の財政基盤を弱体化させ地域独
占の日本の発送電システムを創造的に破壊するチャンスとなった。

 福島の放射線汚染地を年間被ばく線量1ミリシーベルトまで除染
すると5兆円以上かかると試算されている。この除染経費は東京電
力の力量を超えることは明らかで除染事業に巨額の税金を投入して
は財政の健全化に逆行する。

 年間放射線被ばく線量1ミリシーベルト(=自然放射線のレベル)
と「直線しきい値なし(LNT)仮説」の提唱は1958年の国連科学
委員会に出された「放射線はどんなに少なくても危険」とする遺伝
学者の意見によるものである。現在では生化学や医学、薬学分野の
研究者による細胞レベル、小動物の実験から遺伝子(DNA)損傷
と修復のメカニズムが解明され、多くの動物がDNA修復酵素と障
害をうけた細胞をアポト−シスで除去する機能をもち放射線に抵抗
力をもつことが判明している。人体も放射線に対して適応反応を示
す閾値をもち、低線量ではLNT仮説が成立しないことが明らかに
されている。(Radiology,2009 April;251(1):13-22参照)

 専門家は視野が狭い上にこだわりが強く専門バカになりがちで先
見力に欠けることが多い。専門家の意見を参考にすることは重要で
あるが、政治家に求められるのは問題解決力である。

 原発事故による風評被害と住民の避難生活を早期に終息させるた
めに最新の研究成果と放射線被ばく事例の疫学データにもとづき個
人差、年齢差、放射性物質の体内動態も考慮して核種ごとに許容で
きる放射線の上限の線量基準を早急に決める必要がある。動物実験
から推定すればガンマー放射線による外部被ばくなら年間100ミ
リシーベルトの線量でも実害は少なくホルミシス効果でむしろ健康
に良いとする俗説も嘘ではない。

 原子力核エネルギーは宇宙の誕生とともに存在する自然エネルギ
ーである。悪用し使用方法を誤れば桁違いの破壊力をもつが善用す
れば桁違いの付加価値を生む。原子炉が放出する放射線の本体は太
陽光や宇宙線と変わらない空間を飛ぶエネルギーであり、エネルギ
ーが強すぎるため人が直接浴びればリスクは避けられないが化石燃
料とは異なり大気の汚染が少なく環境にやさしいクリーン・エネル
ギーである。用途も多岐にわたり発電のためのエネルギー源となる
だけではなくガソリンに代わる水素の製造、医療分野、農作物の育
種、食品保存など多くの産業分野での有効活用が期待できる。

 事故を起こした原子炉が核分裂反応を停止した後も発熱をつづけ
るのは放射線の放出が止まらないからである。長期に亘る放射線の
放出が廃炉処理を困難にしており、現行の軽水炉原発は爆発事故を
起こしたら採算が採れないことも実証された。水蒸気でタービンを
回す巨大な原発はエネルギーの熱利用効率も悪く前世期の恐竜や20
世紀前半に活躍した蒸気機関車のような存在で近い将来廃炉により
消滅する運命にある。

 軽水炉型原子炉は現在世界の80%以上のシエアを占めているが
技術革新の余地は大きい。炉心を循環する水蒸気でタービンを回す
危険性は素人でも判る。原子炉を一度稼働させた後になってフィル
ター付ベント装置の設置を義務付ける事故防止対策は設計時に放射
線のリスクへの配慮が無かったことを証明している。

 高付加価値の新産業を創るために爆発の危険が無く放射線のリス
クを回避できる安全な原子炉の研究と技術開発を推進し、高速増殖
炉「もんじゅ」で蓄積した技術と軽水炉原発が残す使用済み核燃料
を利用して低コストの小型原子炉を開発し、遠距離送電の必要がな
い高効率の地域分散型発電システムを実現できれば、「禍は転じて
福」となり新しい付加価値の創造で日本の経済成長に大きく貢献す
るだろう。

「著者・松井孝司氏関連のHP」
「市民が創る日本再生のシナリオ」
http://www2u.biglobe.ne.jp/~shimin/saisei/
「21世紀のライフスタイルを考える会」
http://www.jstyle21.net/
http://www.seikatsusha.org/ne/ma/


生活者通信メルマガ版
(マガジンID:0000146184)

−「創刊号」 2005年01月01日発行−
≪2005年05月01日現在読者数:1342名≫


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