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━━━生活者通信メルマガ版━━━━平成24年7月1日 Vol.107━

消費税の逆進性対策に第3の選択肢

                      生活者主権の会  小俣 一郎

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 民自公の3党合意で、消費税増税が大きく進みそうであるが、こ
の消費税増税で大きく問題になっているのが「逆進性」である。

 これに関して政府から「給付付き税額控除」が、自民党からは
「軽減税率」が対策として出されているが、「逆進性」という観点
からだと「現金給付」の方に軍配が上がるようである。

 しかし、対象者をどこで線引きするか、所得や財産をどのように
把握するか、といった問題がそこには存在する。そこで野田政権は
「マイナンバー」という番号制で対応することを提案しているが、
その実現にはかなりの時間がかかるだろう。一方、自民党の「軽減
税率」にしても、対象品目をどのように決めるのかといった難しい
問題を抱えている。

 そこで、逆進性対策の第3の選択肢として提案したいのが『基礎
自治体に裁量権を付与した定額給付金』である。つまり、国は定額
給付金として給付金額を決定するが、対象者の線引きや具体的な実
施方法については基礎自治体に裁量権を与えるのである。

 そして、これが大きなポイントであるのだが、「住民に給付しな
い場合や、住民が受取申請をしない場合は、その金額は国庫に返す
のではなく、その基礎自治体の自主財源に組み込み、基礎自治体が
自由に使えるようにする」というしくみをそこに加えるのである。

 具体的には、まず逆進性対策として国民一人一人に給付する金額
を国で決定し、その金額に基礎自治体の人口を掛けた金額を国から
基礎自治体に給付する。次に、基礎自治体の議会で、住民への具体
的な「給付金額」「給付方法」を、「給付しない」という選択肢も
含めて、議論し、決定するのである。そしてそこで決められた金額
が、決められた方法で、基礎自治体から住民に給付されることにな
る。

 これを採用すれば、まず消費税の「逆進性」の問題は解決できる。
さらに、一人当たりの給付額を、今回の増税分に留まらず、現在の
5%の分等をも考慮して決定すれば、不況で苦しんでいる低所得者
層への対策にもなる。

 次に、この件に関しての「財源と権限」が国から基礎自治体に移
るので、結果的に地方分権を大いに推進することになる。

 そして、基礎自治体の議会が「給付金額」や「所得等による線引
き」「給付方法」を議論し、決定するので、議会に対する住民の関
心が高まり、基礎自治体が活性化することになるだろう。

 金額を入れて具体的に説明すると、消費税が10%になると、年
収が250万未満の4人世帯では、年間約7万6千円の負担増にな
るという数字が第一生命経済研究所から出されているが、もしこれ
を基準にすると、

 まず国会が、例えば、1人年間2万円を給付することを決めたと
すると、4人世帯だと年間8万円が給付されることになる。これは
年収250万未満世帯の負担増を上回る金額であり、消費税増税に
よる低所得者層の負担増は解消されることになる。

 次に、2万×1億2千万=2兆4千億円が国から各基礎自治体に
給付され、国から地方へ財源が移行される。これを各基礎自治体の
議会がどこで線引きするか、どのような方法で支給するかを決める
ことなる。

 ある基礎自治体は、すべての住民に満額の2万円を支給するかも
しれない。

 またあるところは、250万未満世帯は1人2万円、250万〜
500万は1万円、500万以上は0円というように、大まかに線
引きを決めるかもしれない。

 別のところでは、250万未満世帯は1人2万円、それから50
万刻みに2千円減らしていき、250万〜300万は1万8千円・
・・、650万〜700万は2千円、それ以上は0円といったよう
に細かく設定するかもしれない。

 ともかく、具体的な線引きの基準は基礎自治体が決めるのである。

 また、この方式だと、給付方法も基礎自治体が選択できるので、
「現金」で給付するのか、それとも「現物」で支給するのか、基礎
自治体の知恵が試されることになる。

 例えば、期限付きにした「地域振興券」にすれば、住民に給付さ
れた金額は一定の期間内に基礎自治体の中で消費されるわけである。
それは地域経済の活性化につながるはずである。

 また、過疎地域では、タクシー券のような形で現物支給するとか、
給付自体を行わないで、別の形で弱者対策を行うという選択をした
方がより地域住民のためになるかもしれない。

 その他、給付金額を住民税や学校給食費の滞納分の補てんに回す
といったことも選択肢に含め、いろいろな施策を自由に組合せて行
うことを認めて、すべてを基礎自治体の裁量に任すのである。そこ
ではまさしく、首長の、議会の力量が問われることになる。

 いま、生活保護の不正受給が大きな問題になっているが、福祉に
しろ、医療にしろ、社会保障の最前線は基礎自治体が担当している。
今回の消費税増税が社会保障対策であるならば、基礎自治体に「財
源と裁量権」を与えることは、その目的に大いに合致していると言
えるのではないか。

 基礎自治体は住民税のみでなく、固定資産税も担当しており、ま
た一番身近なところで住民と接している。その意味でも、国が一律
に給付の線引き基準を決定するよりも、基礎自治体が担当した方が
地域の実情により合った基準を設定できるだろう。また、その作業
を通じて基礎自治体が住民の状況をより深く把握することが、基礎
自治体の社会保障への対応力を強化することにもなるだろう。

 「定額給付金」には麻生内閣の際の経験がある。基礎自治体はそ
の経験を踏まえて、より良い制度設計ができるだろう。またこれは
恒久的な制度なので長期的な視点で考えることもできる。

 消費税を上げなければならないのであれば、国には、地方を含め
て、より政治が良くなる方向で制度をいろいろと工夫して欲しい。 

 
「著者・小俣一郎氏関連のHP」
http://www.seikatsusha.org/ne/omata/
「生活者主権の会・道州制実現推進委員会」
http://www.seikatsusha.org/dohshusei/
「道州制推進連盟」
http://www.dohshusei.org/


生活者通信メルマガ版
(マガジンID:0000146184)

−「創刊号」 2005年01月01日発行−
≪2005年05月01日現在読者数:1342名≫


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